-COLUMN-

プライドが邪魔して部下に謝れないとき

日付:2024年11月20日

■潔さが人間関係を円滑にする

 

「プライドが邪魔をして部下に謝れない…」

「部下に素直に謝れず、あとで自己嫌悪に陥ってしまう…」

こういったご相談を受けることも多々あります。

 

そもそも、謝罪することは相手に負けることではありません。

謝ること=負けることという考え方を手放しましょう。

謝る言葉がとっさに出てこない人がいます。
どのように謝っていいかわからず、謝罪し慣れていない人もいるでしょう。
こういった場合、
「あの人が〇〇してくれなかった」
「環境上仕方がなかった」
と言い訳をして、とっさに出る言葉が自己防衛になってしまうことも少なくありません。

あとから言い訳になっていたことに気づき、自分でも、

「あのときに素直に謝っていれば、これほどこじれたりしなかったのに…」

と後悔したことがある人も多いのではないでしょうか。

できれば、誰かのせいにすることや、言い訳はしないで済むようにしたいものですね。

そのためにも、とっさのときに何を言ったらいいかを練習しておきましょう。

とくに部下に謝ることができないのは、

「謝ってしまうとみっともない」
「情けない気がする」
「部下より自分のほうが下になってしまう」
といった防衛の気持ちから反応することが多いもの。
そもそも、謝ったからといって情けない人間だと思うのは自分の思い込みです。

ましてや、負けるわけでもありません。

「負けるのはプライドが許さない」
こういった気持ちになることもあるかもしれません。

あとで自分が間違っていたことがわかったとしても、ごまかしてしまう人もいます。

間違った判断や、うっかりミスをすることは、人間なので誰でもあるはずです。

でも、自分より立場が下の人にその姿を見せることで、自分がダメな人間に思えてしまうのです。
長期的に見れば、言い訳やごまかすこと、嘘をついて誰かのせいにすることは、信頼を失うことにつながってしまいます。

素直に
「これは間違っていました。ごめんね」
「やはり君の判断のほうが正しかったね」
と潔く言えたほうが、関係性もよくなるでしょう。

あとでその人の器の大きさをみんなが知ることになり、度量の深さも伝わります。

 

■素直さは上司であっても欠かせない

ある企業の研修先で、同じ部署の20代から50代の人が集まる機会がありました。
そのとき、
「この部署で仕事していくにあたり、職場にどのようなルールがあるといいか」

というファシリテーションをしたことがあります。
みんなで仕事をしていくために、どういうチームがいいか、意見をジャッジすることなく出し合ってもらいました。

そのなかで、20代の入社3~4年目の女性から、

「ミスをしたら上の人も謝ってほしい」

という意見が出ました。
「わたしたち部下は、何かあったらすぐに謝ります。でも上の立場の人たちは何か連絡ミスがあったとしても、『ごめんね』とひと言も言わないのです。部下は当然のこととして謝りますが、上の立場の人たちが同じミスをしても『これくらい仕方がないだろう』と流されてしまう。そういうことが気になっている人たちがいることをわかってほしいのです」

このように、部下の人たちも、上の立場の人たちから

「これは間違いだった」
と、謝るひと言があるかどうかはとても気になっていることです。
上司の素直さや潔さ、器の大きさを試されるところでもあるでしょう。

言い慣れていない人たちは、どんな言葉で言えばいいか、ひとりでロールプレイングしてみることも大切です。

謝り方のバリエーションを、豊富に用意しておくようにするといいでしょう。

 

■まずは、ひと言「ごめん」と伝えよう

上司の姿勢は、思った以上に見られているものです。
必要なところで謝罪して責任をとる上司に、部下はついていきますし、潔く謝ったほうが慕われます。
まずは、「ごめん」と言ってみましょう。

「悪かったね」
「迷惑をかけて申し訳なかった」
「すまなかった」
など、そのときの自分と相手との関係性によって言い方は変えてもいいでしょう。
習慣になれば、自然と定着していくはずです。

 

プライドが邪魔をして、コミュニケーションがうまくいかなくなってしまっては、もったいないことではないでしょうか。

ほんの少し素直になって、大切な人たちとよりよい関係を築いていけるといいですね。

 

 

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