-COLUMN-

「カスハラ問題」を解決する適切な対応法とは?

日付:2024年08月1日

■現代に増えている「カスタマーハラスメント」

 

「サービス業で、暴言を言われたり無理な要求をされたりして、理不尽さに怒りがわいてくる」

こういった経験をしたことはありませんか?

 

昨今では、ハラスメントにもさまざまなものがあります。

「カスハラ」もそのひとつです。

 

サービス業、接客業の人から

「お客様が過剰な要求や謝罪を求めてきて困っている」

という相談も増えました。

これは、カスタマーハラスメント(カスハラ)や悪質クレームと呼ばれています。

 

たとえば、

・営業を妨害する

・土下座や謝罪文などの過剰な謝罪を要求する

・従業員が恐怖を感じる行為をする

・身体を触る

・威嚇的な発言、人格否定、セクハラ発言をする

などがあげられます。

 

それによって、従業員が疲弊したり、不安や恐怖から大きなストレスを抱いたりすることが起きているのです。

カスハラによって感じる怒りの処理や、対処方法などの相談も多くなってきています。

 

本来のクレームと悪質なクレームの目的は、まったく別のものです。

何が原因なのか、どんな要求なのかを確認して、相手に合わせて対応することが求められています。

 

 

■怒りの連鎖で起きるカスハラとクレームの違いに線引きする

 

カスハラを受けるサービス業の人が、自分が抱えたストレスを、同じように別のお店でぶつけてしまうというケースもよく耳にします。

カスハラをしてしまうタイプは、日頃から鬱慣がたまっている人です。

絶対に反撃をしてこないサービス業の人に対して、「わたしはお客様だ」と権利意識を盾にやり込めようとしたり、八つ当たりをしたりするので、やられる側は相当なストレスがかかります。

 

このように、カスハラでは「言いやすい相手に、八つ当たりで怒りをぶつける」という怒りの連鎖が起きることも特徴です。

 

また、クレームを言う人が、すべてカスハラにつながるわけではありません。

セクハラで、安易になんでも「セクハラです」と言うことが問題になっているように、カスハラにも見極めが大切です。

カスハラや悪質クレームと、本来のクレームの違いを、冷静に、客観的に見極めましょう。

 

相手の要求を見極めるためには、ポイントがあります。

・この人がなぜクレームを言ってきているのか

・何が原因なのか

・どんな要求をしてきているのか

・その要求は正当なものなのか

こういったことを確認する必要があるのです。

 

クレームには、従業員の応対、商品の欠陥やサービス内容、お客様の勘違いが含まれている内容や、価値観の相違など、さまざまなケースが考えられます。

 

でも、そういったクレームと、言いがかりや金銭要求などの悪意を持ったクレームは、根本的に異なります。

この類別がとても大切なのです。

 

今月出版される拙著『アンガーマネジメント大全』では、カスハラについても解説しています。

ぜひ、参考にしてみてください。

 

■類別は従業員全員で共有し、相手に合わせた対応をする

 

類別を行う際には、ひとりで判断しないことが得策です。

チームや組織がいままで受けたクレームを共有し、まとめるようにしましょう。

 

「商品やサービス内容について、こういった不満が出やすい」

「従業員の接客態度のクレームには、こういった内容がある」

「価値観の相違やよくあるお客様の勘違いで、こんなクレームも起こりうる」

などの類別を、従業員全員で共有することが大切です。

 

そうすることで、本来のクレーム内容を通り越すような、「謝罪文を書け」「慰謝料を払え」「土下座をしろ」といった要求に対しても、全員が悪質クレームと線引きしたうえで対応できるようになります。

 

少し相手の声が大きいからといって、

「頼んだ商品が全然来ない」

「約束した期日に間に合わないと仕事に影響が出て困る」

といった本来のクレームを、「カスハラだ」と認識してしまわないことも重要です。

最初にボタンをかけ間違えると、本来必要な対応ができなくなってしまいます。

 

たとえば、「商品が届かなくて、仕事が進まない」というクレームの場合。

線引きがしっかりしていると、

・この人は仕事が滞って困っているので、いつ届くのか明らかにする必要がある

・ただ配送状況を聞かれているだけで「仕事が滞った分のお金を払え」と過剰な要求はされていない

・だから、カスハラではない

と冷静に見極めができるようになります。

 

また、その反対に、カスハラと思われるような、

・暴力的な行為を振るわれる

・過度な謝罪を求められたり、暴言や人格否定的なことを延々と言われ続けたりする

といったことがあった場合は、ひとりで対応をせずに職場の人と連携をとることが必要です。

万一の場合に備えて、カスハラ・悪質クレーム対応用のマニュアルをつくって、共有しておくのもいいでしょう。

 

カスハラ問題を過度に抱え込まずに、チームで連携をとりながら適切な対応をしていきたいものですね。

 

 

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