日付:2024年01月10日
■話の出口が見えないときには、いったん区切る
相談事を持ちかけられて話を聴き始めたものの、何が言いたいのかわからなかったり、話し終わる気配がなかったり…といった経験はありませんか?
わたしはコミュニケーション研修をしている立場上、対人関係の怒りについて相談されることが多くあります。
そのなかには、話していて出口のない人もいます。
たとえこちらが
「こんなふうに考えてみたら?」
「これって本来、どういうふうにしたらいいんだろうね」
と建設的な質問や投げかけをしても、
「でも……」と、もとの話に戻してしまう人も少なくありません。
そういった場合、発展的な結果につながることは難しくなります。
もし、相手からの相談事を聴いていて、「本当にこれは無理だ」と思ったときには、
「そういえば、◯分後にミーティングがあって、用事があるからごめん」
「もう1回、また改めてタイミングのいいときにしてくれないかな」
と、その場から離れましょう。
そのままずっと続けても、不毛な時間を繰り返すことになりますし、相手もどんどんヒートアップするばかりです。
双方のためによくないと思ったときは、「あっ、そういえば……」と言いながら、理由をつけて打ち切ることも選択肢のひとつです。
■自己犠牲をともなってまで、相手に尽くすことはしない
「できれば聴いてあげたい」という思いを持っていたとしても、自分をそこまで犠牲にして聴く必要がないもの、自分がダメージを受けてまで聴く必要がないこともあるのです。
サービス精神があって、「何とかしてあげなくては…」と思っているうちに、悩んでいる相手に引きずられてしまう人もいますが、「途中で区切ったら申し訳ない…」と自己犠牲をともないながら尽くすことまではしなくていいのです。
わたし自身も、心のなかで「お手上げ」と思ったときには、そのようにしています。
人は誰でも「自分の話を聴いてほしい、耳を傾けてほしい、理解してほしい、共感してほしい」という要望を持っています。
こちらのコラムでもたびたびお伝えしている「アクティブ・リスニング」は、聴き手が話を聴いているということが、話し手に伝わるように表現する聴き方のことです。
アクティブ・リスニングは、人と対話するなかで生じる多くの問題を解決してくれます。
まずは、相手の言わんとすることを正確に理解して、ときには質問しながら話を引き出し、共感しながら受けとめ、耳を傾けることが大切です。
そういったことを意識しつつ、それでも相手の相談事に対して「これ以上は無理だ」と思ったら、いったんリセットすることも視野に入れておきましょう。
*『アクティブ・リスニング ビジネスに役立つ傾聴術』
(日本経済新聞出版)好評発売中!*