日付:2022年10月10日
■相手が困るような振る舞いをする「攻撃」もある
人のコミュニケーションのタイプには、攻撃的タイプ、非主張的タイプ、アサーティブタイプという3つがあるということを、これまでのコラムでもご紹介してきました。
・攻撃的タイプ…相手を抑えて自分の言いたいことを通そうとするタイプ
・非主張的タイプ…人に対して言いたいことを言えず、自分をうまく出せないタイプ
・アサーティブタイプ…相手も自分も大切にした振る舞いができるタイプ
「攻撃的タイプ」と聞くと、相手が傷つく言動を直接するようなイメージを抱くかもしれませんが、じつは、攻撃的なコミュニケーションには、一見「攻撃的」に見えないものもあります。
それは、「受身的攻撃」というものです。
どういうものなのか、解説しましょう。
「受身的攻撃」は、英語では「パッシブアグレッシブ」ともいわれており、パッシブは「受け身」、アグレッシブが「攻撃」を指し、日本語としては矛盾する言い方ですが、「受け身的な攻撃」という意味を表します。
直接相手に攻撃的な言動をしない「受身的攻撃」にはさまざまなものがあり、
・誰かの足を引っ張るようなことをしてチームを乱す
・頼まれたことをすぐにやらず、期限を遅らせて迷惑をかける
・陰口を言う
・物に八つ当たりをする(例)パソコンで仕事中、大きな音を立ててキーボードを打つ
・何かを頼まれたときに、「ちょっと忙しいので困るんですよね」とわざとため息をついたり、いつまでも不機嫌そうに仕事をしたりする
・意図的に無視をする、口をきかない
・会社を辞めるときに何も引き継ぎをしないで、残された人たちに迷惑をかける
…こういった行動は、すべて受身的攻撃にあたります。
攻撃的な自己表現とは、「相手を抑えて自分の言いたいことを通す自己表現」のことですが、間接的に相手が困るような振る舞いをすることも、攻撃的な自己表現に該当するのです。
■自己主張は、攻撃的にならなくてもできる
仕事だけでなく、プライベートな場面でも、家事をしないパートナーに不満がある場合、
「お皿を洗うのを手伝ってほしい」
と伝えることが必要ですね。
ところが、「察してくれないあなたが悪い」と心のなかで相手を責め、
「わたしも仕事から帰ってきて、食事の支度をして疲れているのに、なんでテレビなんて観ているの? 普通、言わなくても手伝うべきだよね!」
という気持ちを、ため息をついたり、大きな物音で作業することで表現してしまったこと、もしくはされたことはありませんか?
言葉がなければ、相手はなぜ不機嫌になるのか、正確に理解できません。
言葉なく責められることが何度も繰り返されると、相手は
「面倒な人だな…」
「できれば関わりたくない…」
と感じるものです。
やがて付き合いを最小限にしようと避けていくでしょう。
また、こういったタイプの人は、職場に不満を持って辞めるケースが多いのですが、
「こういうところが不満でした」
と直接言わず、人間関係をめちゃくちゃにして、皆が困るような辞め方をするケースも見られます。
そうすると、まわりの人たちは、
「わたしたち、何かした?」
「この人が不機嫌になったのは、わたしたちが原因なのだろうか?」
と、罪悪感を抱き、後味の悪い思いをします。
このように、周囲が困るような爪痕を残すことも、受身的攻撃をする人の狙いのひとつです。
ただ、このような関わり方を続けていては、真の信頼関係を築けません。
相手に自分の意見を主張することは、攻撃的にならなくてもできるはずです。
もし、思いあたる場合には、コミュニケーションのゴールを見直して、ほかの表現の仕方を身につけていきましょう。
■「受身的攻撃」をする相手には、どこまで伝えるのか線引きをしよう
受身的攻撃をする人が仕事関係者のなかにいる場合、その対応は少々厄介です。
思い出してみると、年末の仕事納めの日や繁忙期といった、負担や迷惑がかかりやすい時期に問題行動を起こしているということはないでしょうか?
このタイプの人は、相手を困らせることを目的としているため、もちろん問題を起こすタイミングにも気づかいはありません。
たとえ無意識だとしても、とくに周囲を困らせる時期を選んでしまうのでしょう。
それでも、本人は自分のせいではなく、人のせいにしてしまうのです。
普段はいい人だと思っていた分だけ、こういった側面を見せられたときに愕然とすることもあるかもしれません。
このようなことが起きたときに、「これはやめてほしい」ということをどこまで相手に言うのか、または言わないのかを適切に判断することはとても重要です。
「この行動はやめてほしい」ということがあれば、伝えたほうがいいでしょう。
ただし、
「もっともらしい理由を言っているけれど、それは嘘だよね。あなたはみんなを困らせるために、意図的にこのタイミングを選んで辞めようとしているよね」
といったことまで言ってしまうと、逆上されたり、勝手に恨みを募らせてさらに嫌がらせのような行為をされたりする可能性もあります。
変にこじらせて揉めたくないときには、「言わない」という選択をすることも賢明な判断かもしれません。
受身的攻撃をするタイプの人に遭遇したら、ひとりで抱え込まず、複数名のチームで情報を共有して、対応するといいでしょう。
そのほうが、トラブルを最小限に防げるはずです。
いつの間にか自分が受身的攻撃をしていないか、周囲の受身的攻撃をする人に振り回されていないか、振り返ってみてください。
職場でもプライベートでも、信頼関係を深めていけるといいですね。