-COLUMN-

相手に「共感」を伝えるためのコツとは?

日付:2023年11月20日

■ネガティブな感情は、「共感」で癒される

 

日常のなかで、嫌な気持ちになることは、多かれ少なかれ誰にでも起きることです。

ネガティブな感情にとらわれそうになったときに、誰かに話を聴いてもらったり、共感してもらったりして、気持ちが落ち着いたことはありませんか?

 

反対に、相手がネガティブになっているときに、共感することで癒された様子になったこともあるのではないでしょうか。

 

共感の気持ちを表現するには、まず相手の話に対して、気持ちに寄り添って聴くことが重要です。

とくに相談事で、相手が悩んでいること、困っていることを聴いているときには、アドバイスや解決方法を提示しながら聴くよりも、まずは相手の話に共感を示しながら聴きましょう。

 

相手にネガティブな感情があるときほど、より共感を意識してみてください。

たとえ、問題解決に至らなくても「この人はわたしの気持ちをわかってくれて、寄り添おうとしてくれている」と相手が感じられれば、癒やされることがあります。

 

だからこそ、いつの時代もカウンセラーという仕事が必要なのかもしれません。

話すことで癒され、満足し、安心できるのは、聴き手の共感の姿勢があってこそ得られるものなのです。


 

■「共感」は、言葉だけなぞっても伝わらない

 

共感していることを、相手にわかるように表現する「アクティブ・リスニング」を、すぐに身につけることはなかなか難しいかもしれません。

自分が体験していないことや、自分の考えとかけ離れていることに寄り添うのは、さらに難しいでしょう。

 

ところが、共感が大切だという知識を鵜呑みにして、心のこもっていない共感めいた言葉だけを言う人がいます。

 

「お困りですね」

「それは大変ですね」

「ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません」

こういった、ただマニュアルを読んでいるだけのような「共感をしているフリ」は、逆に話し手をイラッとさせてしまいます。

 

先日、わたしが大きな金額の不正請求について、カード会社に連絡をしたとき、

「それはお困りですね」

と、マニュアル通りの単調な言い方で共感の言葉を言われたことがありました。

そのときに、癒されるどころか、かえって嫌な気持ちになったのです。

 

共感を示すには、言葉だけを言えばいいというものではありません。

「共感」という言葉ばかりが、独り歩きしてしまっているのではないでしょうか。


 

■相手の立場になって、「アクティブ・リスニング」を表現しよう

 

とくに電話の場合、姿が見えず、視覚情報がないため、より聴覚が敏感になると言われています。

声のトーンや話し方から、「いま、忙しいのでは?」「もしかして寝起き?」「何かいいことがあった? 機嫌がいい気がする」というように、姿が見えないのに、相手の状況が感じとれるということはありませんか?

 

電話では、対面時以上にどのような気持ちで相手と向き合うかが重要になります。

相手の言わんとすることを正確に理解し、共感しながら受けとめ、耳を傾ける「アクティブ・リスニング」を表現するには、相手の立場になって聴くことに、神経を集中させることが大切です。

聴くことを生業にしている人たちであっても、「共感は難しい」と言うほどですから、簡単ではありません。

 

もう二十数年前のことですが、

「『聴く』ことは、『聴』の漢字が示すように十四の心と耳を傾ける。そのくらいの意識を向けることなのだ」

と教えてもらったことがあります。

 

言葉や言葉尻だけで共感していると見せようとしても、相手に見破られてしまいます。

ぜひいま一度、「アクティブ・リスニング」を意識して、共感できているか振り返ってみませんか?


 
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