日付:2023年03月1日
■自分の思い込みに気づこう
「当たり前」「常識」「当然」「普通」…どの言葉もよく耳にします。
これらの言葉は、人によって程度の違いがある曖昧な言葉です。
「こうするべき」「こうあるべき」という「べき」は一人ひとり持っていてもいいものですが、それを「当たり前」としてしまうのは、自分の思い込みにすぎません。
偏ったものの見方が入っている証拠です。
アンガーマネジメントについては、これまでのコラムでも解説してきましたが、自分の「こうあるべき」「こうするべき」がその通りにならないときに、人は怒りを感じます。
こちらの内容は、2022年11月10日のコラムでもお伝えしました。
自分自身の思い込みに気づくことができずに、
「こうするのが当たり前だ!」
「これが常識なんだ!」
と怒りの感情とともに、相手に思いを押しつけてしまう人がいます。
「べき」とは自分の理想、願望、期待、譲れない価値観を象徴する言葉のことです。
ところが、人によって価値観は違うものなので、自分にとっては当たり前でも、ほかの人にとっての当たり前ではないかもしれません。
この認識の違いから、トラブルが起きてしまうのです。
「これが当たり前だという認識も、自分の思い込みかもしれない」
こう思えるようになると、自身を振り返る意識が身についていき、余計なトラブルを回避できるようになるでしょう。
■「常識」「当たり前」を相手に押しつけていないか?
アサーティブ・コミュニケーションでは、自分の「こうしてほしい」という主張を相手に伝えること、わかってもらおうとすることをゴールとして設定します。
ところが、一方的に相手に「こうあるべきだ」と押しつけてしまう人は、自分の考えを相手に認めさせることをゴールにしていることが多いものです。
いかに自分が正しいのか、いかに自分の言っていることが世間的に常識なのかを押しつけて、
「相手が間違っている」
と論破する方向に持っていくと、次第に相手との関係性も悪化してしまいます。
そうなると、相手にわかってもらうどころか、反発を受けることになる可能性もあるでしょう。
実際、研修で若手の人たちから話を聞くと、
「『これは常識だ。これくらい当たり前だろう』と言われると、常識がない人のように扱われた感じがして落ち込んでしまう」
「なぜこうなのか意味がわからない。ただ『常識』という言葉で押しつけられた気がする」
と感じていることが少なくないといいます。
不要な反感や怒りを持たれないためにも、「常識」「当たり前」という表現を多用して、周囲に考えを押しつけていないか、日頃から振り返ることが大切です。
■「自分が正しい」と思い込むと、人とわかり合えなくなる
まわりの意見に耳を傾けられないと、「自分が正しい」という思い込みに気づけなくなる可能性があります。
そうすると、相手が自分と違う考えを持っていたり、違うやり方をしていたりするときに、いかに自分が正しいかを実証する情報ばかりを無意識に集めてしまい、
「ほらやっぱり、わたしは正しいでしょ」
という方向に結論を持っていってしまいます。
そのため、人とわかり合うことができなくなってしまうのです。
「Aさんもこう言っているし、こういう情報があるから、わたしがやっていることは正しい」
ということを主張するだけでは、相手の言ったことに耳を傾けることもできません。
プロジェクトを成功させるためによい方法はないか、前例は関係なく違う視点で議論するといった発展的な話にもならなくなってしまうでしょう。
自分の思い込みを周囲に押しつけていないかを振り返り、相手とわかり合える関係を築いていきたいものですね。