日付:2023年01月1日
■意見や価値観が違っても、相手への理解があればいい
人と意見が異なるとき、場を悪くしないように意見を飲み込んでしまうことはありませんか?
そういった場合、あとから悩んでしまうかもしれませんね。
アサーティブ・コミュニケーションの分野では、相手の言うことにすべて同意して、飲み込む必要はないと考えられています。
現在は、価値観も多様化してきました。
さまざまな考えを持つ、違う立場の人たちとやりとりをするなかで、意見が異なることも多々あるでしょう。
アサーティブ・コミュニケーションにおける「心理的安全性」は、
「お互いの考えや意見や価値観が違っても、相互尊重・相互信頼をもとに建設的な議論ができるようになりましょう」
というものですから、同意できない場合があってもいいのです。
建設的な話をするために、
「同意できなくても理解はしよう」
という姿勢を大切にしましょう。
自分と意見が異なる相手を理解できないときに、たとえば
「そうは言ってもね」
「でも。しかし。ですが…」
というように、つい無意識に相手の意見をはじき返してはいませんか?
そのほかにも、ドラマなどで自分の意見を相手にぶつけるシーンで使われる
「お言葉を返すようですが」
「おっしゃることはわかりますが」
というセリフも、
「おっしゃることはわかる」
と添えてはいるものの、相手の意見をはじき返す表現です。
これでは、お互いに話し合うというよりも、
「自分のやっていること(言っていること)のほうが正論だ」
と主張した、相手の話を受けとめていない、攻撃的な表現に当たります。
このような言い方をされた場合、意見をはじき返された相手の反応は、おそらく次の2通りに分かれるでしょう。
①やりとりをやめてしまう
「もうこの人との話し合いは無理だろう」
「もういいよ」
とあきらめて、話し合いをやめる方向に持っていってしまうパターン。
②相手も戦闘態勢になってしまう
「いやいや、こっちだって言わせてもらえば…」
「え、何を言っているの? そっちだって!」
と語気を荒げたり、相手を打ち負かそうとするパターン。
喧嘩腰の状態になってしまったら、お互いにどちらが論破できるかという言い合いに発展してしまうことにもなりかねません。
「おっしゃることはわかります」
と言えない場合があったとしても、まず
「◯◯さんは、このようにお考えなのですね」
「◯◯さんは、こうしてほしいということですね」
と受けとめる言葉を返すことが、相手の意見に理解を示すことにつながります。
言っていることが正論だとしても、自分の意見を突き返すばかりの相手には耳を傾けたくない、という人もいます。
自分の意見・主張を耳に傾けてもらうためにも、相手の意見や考えを認めること、話に理解を示すワンクッションを入れることが大切なのです。
■相手の意見を受けとめるときは、言葉と態度で示そう
研修では、聴くことの大切さをお話ししたうえで、参加者にロールプレイングをしていただくのですが、すぐに態度や言葉にできず、
「心のなかでは同意をしているのですが…」
と戸惑う人もいます。
でも、心のなかで相手の話を受けとめていたとしても、表に出さなければ、その思いは相手に伝わりません。
実際に表現しなければ、コミュニケーションは成り立たないのです。
また、ロールプレイング実習で、「でもね」「いや、そうは言っても」と、無意識に口に出すクセがあることに気づく人も少なくありません。
日頃から、相手の話をどんな言葉で受けとめているか、意識を向けることから始めましょう。
■相手に理解を示す言葉が、不要なトラブルを回避する
相手の意見に同意できないと感じるときや、反論や疑問があるときに、
「このように考えているということですよね?」
と相手の意図を質問すること、
「どうしてそう考えたのか、聴いてもいいですか?」
と背景や相手の事情を引き出して耳を傾けることも重要です。
相手の意見の背景や事情を知って理解したうえで、
「わたしはこのことに関して、こういう理由でこのように考えているのですが、どうでしょうか?」
と、話し合いややりとりを始めましょう。
何か無理な要求をされたり、異なる意見を言われたりしたとき、いきなり
「無理です」
「それは違うと思います」
と、急に戦闘態勢になってしまう人もいるかもしれません。
そうなることを避けるためにも、
「こういうふうにしてほしいということですよね」
と相手に理解を示したあと、
「それに関しては申し訳ないのですが、こういう理由でお引き受けできない状況です。こういった方法であればお引き受けできるのですが、いかがでしょうか?」
「わたしたちのチームは、こういう理由でこの条件すべてを飲むことができないので、ご相談できませんか?」
というように、相手との対話を進めるのが得策です。
相手に理解を示す言葉を使うことが、攻撃的な人との不要なトラブルを回避する鍵になります。
すぐに「売り言葉に買い言葉」の状態になってしまう人ほど、ワンクッションを置く言葉を事前に用意しておくといいですね。