日付:2022年12月20日
■「どう聴くか」を意識しよう
人と対話をするなかで、「相手にどう伝えるか」ということばかりに、意識を向けすぎてはいませんか?
長年研修をしていて感じるのは、多くの人がアサーティブ・コミュニケーションのことを、「言いにくいことの伝え方を磨くスキル」だと勘違いしているということです。
「どう話したらいいですか? どう伝えたらいいですか?」
という相談は、日頃から山ほどいただきますが、
「人の話にどう耳を傾けたらいいですか?」
「相手の話をどのように聴いたらいいですか?」
と尋ねてくる人は、全体のたった2割程度です。
コミュニケーションにおいて、どう表現したらいいのかを学ぶことももちろん大切ですが、それよりも、相手が伝えてくる意見について、耳を傾けることに注力しなければ、対話自体がなくなってしまいます。
双方向のコミュニケーションを実現させるには、どう伝えるか、どう表現するかだけでなく、「どう聴くか」という意識も欠かせません。
実際に多くの人から、
「(相手が)わたしの話を全然聴いてくれません」
「(相手が)途中でこちらの話を遮って、自分の話ばかりするので最後まで聴いてほしい」
「こちらの話をもっと聴いてもらうにはどうしたらいいですか?」
という相談も受けます。
それほど、人は「伝える力」「話す力」を高めたいと思いながら、相手には「わたしの話を聴いてほしい」「受けとめてほしい」と求めているのです。
このことからも、コミュニケーションには「どう聴くか」が欠かせないポイントになることがわかるのではないでしょうか。
■傾聴のポイントは対面でもオンラインでも同じ
よりよいコミュニケーションをとるには、どのような聴き方をしたらいいのでしょうか?
一番大切な部分は、対面でもオンラインでも共通しています。
・適度な相槌を打つ
・相手に身体を向ける
・最後まで相手の話に耳を傾ける
・必要なところでアイコンタクトをとる
このように、話を聴くということは、ただ声を聞くだけではありません。
相手に、話を聴いていることがわかるように表現できることが大切なのです。
研修のロールプレイングでは、無意識に相手に話しにくい印象を与えている人も多いもの。
腕組みをしたり、頬杖をついたり、椅子の背もたれに完全にもたれかかる、眉間にシワが寄っていて表情が怖い…といった態度をとっていないか、一度見直してみるといいでしょう。
また、ペン回しや貧乏ゆすりなどの気になる動きや、資料を見ながら、パソコンやスマートフォンの操作をしながら話を聞く「ながら動作」にも気をつけましょう。
こうしてみると、普段、聴くということに対して無頓着な人は非常に多いものです。
電話やオンラインの画面オフでの対話で姿が見えない状況であればなおさら、適度に相槌を打つことや、聴いているという表現をすること、相手に身体全体が見えなくても、どこかで反応を返すことなどは、コミュニケーションの基本です。
よく「8割聴いて2割話す」と言いますが、とくに相談を受けるときや、ヒアリングをするときは、相手の話を聴くのが8割、自分の話をするのが2割ぐらいの割合を目安にするようにしましょう。
会話や対話、議論をする場合は、5:5でもいいかもしれません。
このようにその場の目的によって、「話す・聴く」の割合を意識するといいでしょう。
■意図的な無視は攻撃的な表現になる
相手に対して聴く姿勢を見せることは、話を聴くうえでとても大切です。
反対に、「無視は精神的殺人」という言葉があるほど、意図的な無視は攻撃的な表現に該当します。
時折、意図的に無視をする人がいますが、暴言を吐かなくとも、相手に大きなダメージを与えているのと同じことになります。
ハラスメントは、もともと「嫌がらせ」という意味ですから、相手の話を意図的に聴かず、目も合わせず無視をする、何も意見を聴かないという態度は、当然ハラスメントに該当します。
「お前はバカだ、使えない」
と直接的に傷つく言葉を言わなくても、相手を大いに傷つけるということを心に留めておきましょう。
アサーティブな聴き方を心がけるには、まず
「あなたの話を聴いているよ」
と相手に伝わる表現ができるということが必要になります。
「自分の話を聴いてほしい」と思っている人はとても多いものです。
だからこそ、相手の話の大事なポイントを復唱するような気持ちで「傾聴」を意識してみると、コミュニケーションがぐっと円滑になるでしょう。
自分が話すよりも、まず相手の話に耳を傾けて、アサーティブなコミュニケーションをとれるようになるといいですね。