日付:2023年09月20日
■信頼関係の構築に欠かせない「アクティブ・リスニング」
近年は、価値観が多様化してきました。
そのようななかで相手との価値観の相違を埋めていくには、「話す」ことも大切ですが、「聴く」力も必要とされています。
「アクティブ・リスニング」は、聴き手が話を聴いているということが、話し手に伝わるように表現する聴き方のことです。
身につけるには、相手の話を理解し、ときに共感しながら聴き、さらには、相手の話を引き出す発展的な質問をできることが求められます。
アクティブ・リスニングが習慣化すると、相手との相互理解が生まれ、信頼関係の構築へとつながっていくのです。
組織のなかで自分の考えや気持ちを、誰に対しても安心して発言できる心理的安全性を叶えるには、キャリア・ポジション・立場の違う相手の話に耳を傾けられることが必須要素となります。
■アクティブ・リスニングは、誰にとっても必要なスキル
アクティブ・リスニングができていない人は、思っている以上に多いものです。
アンガーマネジメント(怒りと上手に付き合うための心理トレーニング)の研修をしていると、自分と違う意見に触れることでイラッとしたり、憤りを感じたり、相手の話に素直に耳を傾けられなくなってしまうというケースを耳にすることが多々あります。
あなたはいかがでしょうか。
相手の話を突っぱねる、相手をやり込めてしまう、いかに自分の意見が正しいかを主張し、論破してしまうことはありませんか?
長年研修やコンサルティングをしていると、相手の話を聴けない人の話や、会話が成立しない人からの相談は後を絶ちません。
「上司の面談で話を聴いてもらえなかった」
「話を十分に聴いてもらえず、一方的に話されてしまった」
このような不満やストレスを抱いている人は大勢いるのです。
一方で、コロナ禍によってリモートワークが増えたことで、報告・連絡・相談といった必要最低限のコミュニケーションだけになってしまい、部下が抱えている悩みに十分に耳を傾けることができていないと感じている管理職も増えています。
アクティブ・リスニングは、部下がいるマネジメント層には、より求められているスキルです。
もちろん、マネジメント層のみではなく、部下の立場でも必要な場面はあります。
「なぜその指示があるのか?」
「この組織ではこのやり方なのか?」
と、職場での指示に対して疑問を持っても、上司の話を表面的に聴くだけで、質問しない人もいるのです。
そのことが原因で、意図が理解できずに進めて、トラブルになってしまったケースも見受けられます。
「上司がすべてをわかるように言ってくれなかったから」
と報告してくる人もいるのですが、疑問を持ち、上司の話を引き出し、確認できなかった側にも責任はあるものです。
このようなとき、アクティブ・リスニングのスキルは、相手の話を引き出し、確認するためにも役立ちます。
職場の心理的安全性を実現し、ビジネスを円滑に進めるためにも必要なビジネス能力と言えるのです。
■コミュニケーションの主導権は、「聴き手」が握っている
本来、コミュニケーションは双方向のものですが、うまく話すこと、論理的に話すことに注力する人が多いのではないでしょうか?
でもじつは、コミュニケーションの主導権を握っているのは聴き手です。
相手が無反応であったり、話にくい態度をとったり、何かしながら聞き流す態度をとったりしているのであれば、いくら話し上手な人でも会話が成立しなくなってしまいます。
ですから、まずは相手が話しやすい適切な聴き方ができるように相槌を打つことは、話を円滑に進めるために欠かせません。
逆に、あまり話すことが得意でない人も、相手が話しやすいように耳を傾けたり、相手が話しやすい質問を投げかけたりすることで、双方向の対話が進んでいきます。
アクティブ・リスニングができる人になると、「この人は、わたしの話をしっかり聴いてくれる」と好意を持たれ、信頼関係を築きやすくなります。
そうすることで、いろいろな情報が耳に入りやすくなり、人間関係も円滑になってくるのです。
さらに、相手の話を整理して要約できるレベルにまで聴く力を磨けると、自分の話を整理する力も、自然と身についていきますし、仕事でもプライベートでも、トラブルが最小限になり、人間関係を築くことができます。
相手が話しやすいように、反応しながら聴くことが、コミュニケーションの行方に大きく影響しているのです。
■相手が話しやすいように聴く
話し手が主導権を握ろうとすると、自分の言いたいことを話すだけで、相手の話に耳を傾けないというコミュニケーションをとってしまいがちです。
でもそれでは、相手に
「話をコントロールされた」
「一方的に意見を押し付けられた」
といった印象を与えてしまいかねません。
話し手の立場になったときのことを振り返ってみてください。
一方的に自分の話したいことを話し、相手に自分の目的をわからせて、コントロールするようなコミュニケーションをとってしまうことはありませんか?
一方的なコミュニケーションをとると、聴き手は違和感や疑問を抱き、少なからずストレスを感じます。
そして、結果的にお互いが納得できるゴールへ向かうことも、叶わなくなってしまうのです。
当たり前のことですが、それでは、組織もプロジェクトもうまくいきませんね。
円滑なコミュニケーションの秘訣は、相手が話しやすいように聴くことです。
物事をスムーズに進めるために、聴く力、アクティブ・リスニングを身につけていきましょう。
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