-COLUMN-

むやみに謝罪していませんか? 適切なクレーム対応をするための「傾聴法」

日付:2024年07月1日

■事実確認ができてからお詫びの言葉を伝えよう

 

クレームを受けたとき、反射的に謝罪してしまうことはありませんか?

相手からクレームを言われたときに、絶対にこちらに非があるとわかるケースがあります。

 

たとえば、壊れた商品を見せられ、明らかに「これは欠陥品だ」とわかるときや、お客様が何分も待たされているときなどです。

その際は、即座に「大変申し訳ございません」とお詫びをすることが欠かせません。

一方で、事実確認をせずに、むやみに謝ることで、あとからトラブルにつながるケースもあります。

 

また、

「病院で処方された薬を飲んだら、具合が悪くなった。処方を間違えて出したよね」

と患者からクレームを言われたとします。

そのときに、

「大変申し訳ございません」

とすぐに返してしまったら、「病院側が間違った薬を処方したことを認めた」と受け取られる可能性があります。

でもこれは、事実確認をしてみなければわからないことです。

 

ほかにも、相手の勘違いによるクレームの場合もあります。

まずは、

「恐れ入ります。もう少し詳しくお話を伺えませんか?」

「申し訳ありませんが、もう少しこの件に関して、事情を伺ってもよろしいでしょうか?」

と傾聴する姿勢を示しましょう。

そのうえで、どんなことがあったのか、事情を聴くよう切り替え、むやみに謝らないことも大切です。

 

ただ、むやみに謝らないほうがいいとはいえ、言葉遣いには配慮が必要です。

「そんなはずはないのですが…」

「お客様の思い過ごしです」

「それは○○様の勘違いだと思います」

と相手のせいにする表現により、

「クレームを言ったら、逆にこっちが責められた!」

といった、新たなクレームが発生してしまう可能性があります。

相手の怒りを増長させないように注意してください。

 

■言葉や相槌で相手を怒らせることもある

 

怒りに対する相槌に使うには、難しい言葉があります。

「そうですか」もそのひとつです。

 

相手が怒っているときや不快な思いをしているとき、何かクレームを言ったときに、

「あ、そうですか」

と言った瞬間に、

「『そうですか』じゃないよね。そういう他人事みたいな反応、やめてくれないかな」

と、逆に怒られるケースがコールセンターでありました。

聴き手には、そんなつもりはないかもしれません。

でも、表情や態度が見えない電話では、よほど気持ちを込めないと、心がこもっていないように聴こえてしまう可能性が高い相槌となってしまうのです。

 

そのほかにも、

「はぁ」という気のない返答や「はい、はい」という単調な相槌の繰り返しも、さらに相手を怒らせます。

これは、真剣に聴いていないように聞こえるからです。

こういった言葉の使い方にも、気を配る必要があるでしょう。

 

逆に、クレーム時にも有効なのは「共感」です。

「かなり待たされたんです」

と言う相手に対して、

「そうですよね…。大変お待たせいたしました」

「お待ちになっている間、不安な思いをされましたよね」

と、本当に申し訳ないというこちらの想いと、相手の感情に共感を示す言葉を入れるといいでしょう。

 

■相手の話を傾聴し、大事なポイントを復唱する

 

クレーム対応のときは、相手の感情のボルテージが上がっていることがあります。

感情的になっている相手の話を聴くときには、共感だけでなく、相手の話の大事なポイントを繰り返すことも有効です。

 

たとえば、

お客様「ずっと、午前中に荷物が届くから待っていたのに!」

こちら「そうですよね。ずっとお待ちいただいたんですよね」

お客様「3時間も待っているんだけれど!」

こちら「3時間も申し訳ありません」

と、大事な話のポイントを繰り返すようにします。

丁寧に傾聴している姿勢を示すことで、「この人は、わたしの話を間違いなく正確に聴いてくれているな」と相手も把握できるのです。

 

さらに、自分の言った重要なポイントを相手の口から耳にすることで、自分の言ったことの確認にもなります。

このやりとりのなかで、お客様もだんだん冷静さを取り戻していくのです。

 

クレーム対応時、とくに相手の怒りのボルテージが高いときは、共感の相槌をして、相手の話の大事なポイントを復唱し、確認しながら、繰り返し聴いていくことが大切です。

冷静さを忘れずに、まずは、相手の話に傾聴している姿勢を示すことを意識してみてくださいね。

 

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