日付:2023年02月20日
■ネガティブな情報や感情は、記憶に残りやすい性質がある
何かをしようとするとき、過去の経験から、うまくいかなかったことを思い出してしまうことはありませんか?
人は、ポジティブな情報よりも、ネガティブな情報に注意を向けやすく、記憶にも残りやすい性質を持つことがあるといわれています。
これは身の危険を守り、リスクを避けるために、脳の機能が発達したためなのだそうです。
人が生き延びるためのしくみとして、失敗したり、怖い思いをしたときに、二度と同じ目に遭わないよう、脳はネガティブな情報や感情を、より強く記憶し、残すようになっています。
その分、過去に体験した不快な体験の記憶は、嬉しい、楽しいというポジティブな感情を抱いたときの記憶よりも残りやすいのです。
こういった、誰もが持っている性質を「ネガティビティバイアス」と言います。
「上司に提案したけれど、いきなりかなり厳しいことを言われて、嫌な思いをしたことがある」
「大勢の前で言いたいことがうまくまとまらなくて、恥ずかしい思いをした」
「自分より専門知識のある人に意見を伝えたら、その後の関係が悪くなってしまった」
「後輩に、『こういうことをやめようね』『直そうね』と言ったら反発されてしまった」
こういった過去の体験から、
「また同じようなことになるに違いない」
と思い込んで伝えることを躊躇してしまったり、
「どうせわたしはうまく伝えられない」
という思いにとらわれてしまったりすることはありませんか?
こういった思いを抱えていると、2022年11月20日のコラムでもお伝えした「相手と心のなかで対等である」という、アサーティブなコミュニケーションをとれなくなってしまうことにもつながります。
たとえ、このような経験が過去に何度かあったとしても、
「あのときは、そういう結果になった」
という事実があるだけのことです。
「すべての場合において、そうに違いない」
「また同じようになったら怖い」
と考えるのは、本人の思い込みにすぎません。
■リセットする言葉でネガティブな思い込みを打ち消そう
脳は変化を嫌うため、
「いままで通りの考えや価値観でいい」
「違うものの見方をするのはとてもエネルギーを使うから、変わるのは嫌だ」
と思ってしまいがちです。
そのほかにも、
「変わりたくないし、ネガティブな思いや体験もしたくない」
という自己防衛心からアンコンシャスバイアスが生まれているのかもしれません。
そのため、このネガティビティバイアスに対応するには、
「すべての場合に、同じようにリスクをともなうかどうかはわからない」
「同じ結果になるかどうか、わからない」
と、自分自身の意思で思考をリセットしていくことが大切です。
もし、
「またうまくいかないかもしれない」
「前にうまく言えなかったから、こういうタイプの人は苦手だ」
「こういう人はすぐに嫌な顔をするだろうし、高圧的になるだろう」
という思考が浮かんできたら、次のように考えてみてください。
「いま、そういう考えがわたしの頭のなかに浮かんできたけれど、まぁそれはそれ」
「前はそうだったけれど、次は違うかもしれない」
「そうはいっても、やってみよう」
実際にこういったリセットする言葉を使って、自分の思い込みを打ち消していきましょう。
■ネガティブな思い込みがあることを自覚しよう
ネガティブな思いが浮かんできてしまうのは、決していけないことではありません。
人間の脳のしくみ上、仕方のないことなのです。
実際に、どのようなバイアスを持っているのかということに気づくと、それがどれほど人との関わり方に影響を与えているかもわかってくるでしょう。
ネガティビティバイアスをなくそうとするのではなく、まずは、自分のなかにもそういったバイアスがあるのだと自覚するところから始めてみませんか?
そのうえで、ネガティビティバイアスに引っ張られないように、あらかじめ思考をリセットするための言葉を用意していくことがポイントです。
使う言葉が変わっていくことで、人間関係も徐々に変化していきます。
まわりの人たちとわかり合えるように、ネガティブな思い込みを手放していけるといいですね。