日付:2025年05月10日
■感謝を期待しすぎない
相手に何かをしてあげたときに感謝やお礼の言葉がなく、
「感謝をするべきだ」と思ったことはありませんか?
感謝されたとしても、自分が思っていたことと違ったとき、
「自分ならばこんなふうに感謝を伝えるのに…」と、
虚しさや残念な気持ちから、怒りがわいてしまう場合もあります。
人それぞれ、感謝のあらわし方も違うものです。
ひと口に「感謝をあらわす」といっても、求めているものは大きく違います。
わたしも若い頃は、「これだけしてあげたのに…」と思ってしまったこともありました。
でも、大人になってから、それは利己的な考えだったということに気づいたのです。
ときには、相手に感謝の言葉を期待しすぎないことも必要です。
■怒りや不満は「お願い」として伝えよう
人によって「してもらえることが当たり前」
と思っている人もいるかもしれません。
そういう人に対しては、正直に
「せめて、ありがとうは言ってほしい」
と伝えてもいいでしょう。
でも、「この人はいつも感謝が足りない人だ」
と相手に対して嫌な態度をとったり、
言葉で伝えずに不機嫌な態度をとることは避けたいもの。
これでは、あなたがなぜ怒っているのか相手に伝わりませんし、
「あの人は、急に機嫌が悪くなることがあって感じが悪い」
と、逆に自分の評価を下げることにつながってしまいます。
さらによくないのは、
「あの人は、ここまでわたしがしてあげたのになんの感謝もない」
と、ほかの人に悪口のように言うことです。
これを繰り返していると
「この人はこういうことで怒って、悪口を言ってしまう人なんだ」
という印象を、周囲に与えてしまいかねません。
また、その悪口がまわりまわって、
本人の耳に入ってしまう可能性もあります。
感謝の仕方について怒りや不満がわいたとき、本当に気になったら
「『ありがとう』『助かった』と言ってくれると、次も気持ちよく協力できるんだ」
と、本人にお願いする形にして直接伝えましょう。
■伝える基準は「怒りで後悔しないこと」
相手に何も言わなければいいわけでもありません。
言わないことで怒りや不満が積み重なり、
「もう関わりたくない!」と爆発して、
一気に疎遠になることもあるからです。
また、関係自体が終わってしまって、
取り返しがつかなくなるなどデメリットが生じる可能性もあります。
気になることを伝えるかどうかは、今後のことを考えて決めましょう。
アンガーマネジメントでは、「怒りで後悔しないこと」
がひとつの基準になっています。
決めるときは、どちらの行動をとったほうが後悔しないか
という基準で決めるのがおすすめです。
伝えたことで、相手の行動が変わるかどうかはわかりません。
「相手がどう受けとめるかわからないけれど、腹を割って言ったほうがいい。
そのほうが後悔しない」
と思うのであれば、伝えたほうがいいですね。
たとえば、
「〇〇のとき『ありがとう』のひと言がほしかった」
と声をかけてみてください。
もし、あとで「やはり言わないほうがよかったな…」
と思うようなら、言わない選択もあります。
■気持ちのいい関係性に感謝の言葉は不可欠
そもそも、まわりの人の助けを借りるために、
感謝やお礼は欠かせません。
たとえば、仕事上で何かアドバイスをしてもらったら、
「ありがとうございます。おかげさまでこのようにできました」
と報告するのが礼儀です。
もし、後輩や部下に感謝が足りないと感じる人がいるときには、
まずこのコミュニケーションの必要性から教えるほうがいいかもしれません。
目上の人に対しては、「感謝が足りませんよね」とは言えないものです。
こういったときには
「必要なときに感謝の言葉を言えない人なんだな」
と割り切ってしまいましょう。
以前、ある企業の役員向けのコンサルをしたときに、
こんな思い込みを持っている方がいました。
「上の立場になったら、むやみに部下に『ありがとう』と言わないほうがいい」
というものです。
たとえば「今日のネクタイは素敵ですね」とほめられても、
「あ、そう?」と言うだけ。
うれしい気持ちを表に出してニコニコしたり、
「本当? ありがとう」などと言っては威厳が保てない、
と思い込んでいたのです。
この方は、若い頃に「ヘラヘラするな」と指導されたことが影響しているとわかり、
思い込みを変えていきました。
後日、彼の部下たちの間では
「上司が笑顔でありがとうと言った!」
「いったい何が起こったんですか!?」
という話題で持ちきりだったそうです。
感謝は、まわりにとても大きな影響を与えます。
いいコミュニケーションがとれるように、
お願いとして伝えることも必要です。
お互いに気持ちよく関わっていきたいものですね。
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