日付:2024年11月1日
■怒りの連鎖を断ち切る
「イライラを抑えきれず、つい八つ当たりをしてしまう…」
このように感じたことはありませんか?
こういった相談は、思いのほか多いものです。
怒りには「立場が強い人から、弱い人に流れていきやすい」という性質があります。
仕事上では、部下やサービス業の人、取引先の人(発注側のほうが立場が強い)などが、八つ当たりを受けやすい人たちです。
つい八つ当たりをしてしまう人からは、
・上司に厳しく注意を受けてムカッとしてしまい、自分が下請け会社の担当者にキツくあたってしまった
・イラッとすると部下に感情的になってしまう
・何も文句を言い返してこないだろうと思われる、サービス業の人に文句を言ってしまう
…といった話もよく耳にします。
八つ当たりされる側は、不毛な怒りをぶつけられている状態です。
当然、相手に対していい印象を抱くことはありません。
そして、本人に言い返せないために、さらに下の立場の人に八つ当たりをしてしまいます。
このように、不毛な怒りは連鎖してしまうのです。
■アンガーログをつけてみよう
怒りの連鎖を起こさないためにも、自分でできることがあります。
ここでご紹介する「アンガーログ」は、アンガーマネジメントのトレーニングのひとつです。
習慣化して身につけることで、怒りにくくなるための体質づくりができます。
参考として、項目と書き方の例をご紹介しましょう。
《日時》11月1日
《場所》自宅でオンラインミーティング中
《出来事》部下とオンラインミーティングをしていたときのこと。終わった途端、部下が挨拶もなくオンライン画面からいなくなってイラッとした
《思ったこと》最後に挨拶くらいはするべきだ。しかも、上司のわたしを残してさっさと退出すべきではない
《怒りの強さ》4
このように、書き出すことで、自分の怒りの傾向やパターンがわかるようになった人が多くいます。
自分の怒りのパターンがわかると、新しく怒りが生まれたときにも、
「またこのパターンだな」
と冷静でいられるようになってきます。
また、自分の体調によって怒りの感じ方が変わることに気づく人もいました。
空腹時、寝不足時、月経のタイミング、仕事が重なって余裕がないときなど…、人によって傾向は異なります。
体調で感じ方が変わることがわかると、
「寝不足だから今日は気をつけよう」
と、意識することもできるようになるでしょう。
ほかにも、
「怒りがわいたときに『アンガーログをとらなくては』と思うことで、理性が働き、怒りに振りまわされることがなくなった」
という人もいました。
アンガーログで自分の傾向を知ることで、いつの間にかカッとなる機会が減り、日常がラクになっていくはずです。
「自分の怒りをなんとかしたい」
と思うなら、ぜひ実践してみてくださいね。
■無意識の行動に気づいて改善する
以前実施した管理職向けのオンライン講座で、1500名の人に2週間、怒りの記録(アンガーログ)をつけてもらったことがあります。
このとき、
「立場の低い人に怒りをぶつけてしまっていた」
と、シェアしていた人が複数名いました。
こうして、自分で気づいて自己開示できた人は、改善へ向けて大きく進んでいます。
じつは、無意識に八つ当たりをしてしまっている人は案外多いもの。
自覚がないために繰り返してしまっている、という現実があります。
まずは、
「自分はイライラすると、立場の弱い人に怒りをぶつけてしまうんだ」
「この人たちは悪くないんだ」
と気づくことが大切です。
そうすると、同じような怒りを感じたときに
「八つ当たりするのではなく、どう怒りを解消させたらいいのか?」
と考えることで、改善に向けて取り組みやすくなります。
ひとりが八つ当たりをやめることで、負の連鎖を断ち切ることができるのです。
アンガーマネジメントでは、自己理解の第一歩として、自分にはどのような怒りの傾向があるのかを知ることの大切さを伝えています。
「無意識」が「意識的」になるように気がつくことが、改善への第一歩。
自分の怒りを否定せず、一度見つめてみてください。
感じた怒りを受けとめたうえで、人とのよりよいコミュニケーションを築いていきたいものですね。
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