日付:2024年07月20日
■言い訳と判断せずに、まずは傾聴する
相手の話に対する思い込みから、食い違いが起きてしまったことはありませんか?
管理職の方々を対象にしたアンガーマネジメント研修にて、「どのようなときにイラッとするか」と尋ねることがあります。
そのときに多くあがってくるのは、
「部下に注意をうながしたり指導をしたりする際に、言い訳をされること」
という意見です。
つい先日も、ある企業の管理職研修にて40代前半の課長職の方からご質問をいただきました。
部下(20代)が、指示した通りのやり方で進めていなかったので、それを指摘したら、
「あの…途中で部長からアドバイスがありまして、その通りに進めていたんです…」
と言ってきたそうです。
「言い訳するな!」
とピシャリと相手に怒ってしまったら、相手がさらに
「言い訳ではなくて…」
と言ってきたとのこと。
このようなとき、言い訳する相手にどのように対応すればよいか、という内容でした。
上司としては、部下の言い分は言い訳だと感じられました。
でも、部下の反応からすると、言い訳の認識がなく、単になぜこのやり方でしたのか、事情を説明したかったのかもしれません。
そこで、相談をしてきた課長職の方に、
「部下にわかってほしかったこと、伝えたいことはなんだったのでしょうか?」
と尋ねると、
「部長からアドバイスを受けたのであれば、すぐにわたしにそのことを報告してほしかった。そこですり合わせをしてから進めてほしかった」
とのことでした。
だとするならば、
「言い訳するな!」
と話を遮らず、部下の意見にひとまず耳を傾けたうえで
「そのような事情があったとしても、いまのタイミングでは言い訳のように聞こえてしまうよ。だから、アドバイスを受けた時点で報告をしてほしかった」
と言ってはどうかというアドバイスをしました。
言い訳は聞きたくないという気持ちから、相手の話に耳を傾けられないという人は多いもの。
でも、今回のケースのように、そもそも相手が言い訳だと認識していない可能性もあります。
行き違いを防ぐためにも、ひとまず傾聴してみてはいかがでしょうか。
■思い込みにとらわれず、事実に耳を傾けよう
パワハラ防止法が施行され、組織から
「パワハラを受けたという相談を受けることも多くなった」
という話を耳にすることも増えました。
わたしも、
「パワハラを受けたという相談を受けたときに、どう対応すればいいのか」
という相談や、窓口担当の方々を対象としたヒアリング研修の依頼を受けることがあります。
さまざまな事例のなかには、パワハラを受けたと相談するものの、話が違ったということも起きているようです。
本当はいまの部署での仕事が嫌で、部署異動をしたいがために上司にパワハラされたと言ってくる人や、上司のことが嫌で、その上司を異動させたいから…というとんでもない理由で相談してくる人もいます。
「上司が高圧的な態度で接するので、日々恐怖を感じながら仕事をしています。職場の飲み会で『2次会も来るんだろ?』と言われたり、夏季休暇を申請したら、そんなに休むのか? と言われたり…いろいろと圧をかけられます」
といった話があったそうです。
そこで、上司がパワハラをしているものと思い込んで調べてみたところ、じつはそうではなかったという事例がありました。
現場のほかの人にヒアリングしてみると、実際には相談者は飲み会の2次会にも行っていないし、休みも希望通りにとれているとのことでした。
さらに調べを進めると、相談者は地方勤務が嫌なので異動をしたかったから、今回のような相談をしてきたというのです。
このような相談をされた場合、何が事実なのか、思い込みに影響されることなく聴き出すことが欠かせません。
ただ事実を把握するために、事情聴取のようになってしまう人もいるので注意が必要です。
「で、2次会には行ったの? 行かなかったの?」
と問い詰めるように聴くのではなく、
「そのように言われたんだね。その後は2次会に行ったの?」
と、相手が答えやすいように確認しましょう。
思い込みから、事実が明確に伝わらなくなってしまうことはよくあります。
本当はどうだったのか、まず傾聴する姿勢が大切です。
そのうえで自分の意見を伝え、よりよいコミュニケーションを築いていきたいものですね。
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