日付:2024年06月1日
■共感しても同情はしない
あなたは、ネガティブな相談を受けたことはありますか?
相談者の悲しい出来事や、ひどく落ち込んだこと、絶望的な気持ちになったことなどに耳を傾けるとき、共感したとしても、同情するのはおすすめできません。
なぜなら、同情することで、相手と対等の立場ではなくなってしまうからです。
「同情」は相手のことを、かわいそうと思ったり、哀れんだりすることです。
人は同情されると、「自分はかわいそうな存在だと思われている」という気持ちに陥り、なかには「相手から見下された」と受け取ってしまう人もいます。
つまり、同情されても、話をした人の心は軽くならないのです。
だからこそ、ネガティブな話を聴く際、聴き手は相手に寄り添いながらも、フラットな気持ちで聴くようにしましょう。
とくに、部下からネガティブな内容の相談を受けるときには、
「〜のように感じたんだね。それは大変だったね」
と共感しつつ耳を傾け向けることがポイントです。
■まずは相手の話に耳を傾けよう
職場でネガティブな内容の相談を受け、なんとか励まそうと思い、相手の話に耳を傾けず喋りすぎてしまったというケースも耳にすることがあります。
ある研修にて、課長職の方から研修後に質問されたことがありました。
部下から、
「相談があるんです。この仕事、やっぱり向いていないと思っていて…。だから今後、やめようかどうしようか悩んでいて…」
と言われ、なんと答えていいのか困ってしまった。
そこでとっさに、
「そんなことを言わないで。◯◯さんはがんばっているし、向いていないはずがないよ。わたしだって、そんなふうに思ったこともかつてはあって…」
などと話し続けたところ、相手が黙ったまま。
最後には「もういいです…」と話が終わってしまった。
あのとき、どう対応すればよかったのか…、という内容でした。
そういったときには、
「この仕事が向いていないと思ってしまったんだね。どうしてそう感じたのか、もしよかったら聴かせてくれるかな」
と相手の話を受けとめ、その背景や相手が思っていること、話したいことに耳を傾けるのが適切です。
「相談があります」と持ちかけられたら、まずは相手の話に耳を傾けることに徹しましょう。
■ネガティブなフィードバックを受けたときほど、素直に聴く
では、自分自身に対してネガティブな指摘を受けたときは、どうしたらいいでしょうか?
まずは、素直な気持ちで、相手の言葉を受け取りましょう。
攻撃的な態度をとったり、「でも」「だって」とはね返したり、まったく話を受け入れない態度をとったりしていると、自分自身の成長を阻んでしまうことになります。
ネガティブな指摘を受けたときの姿勢や聴く態度は相手によく見られており、印象にも残るものです。
たとえ、耳が痛くても、素直に受け入れるように聴くことができると「もっと関わってあげよう」「もっと成長のためのサポートをしよう」と、相手側にポジティブな印象を与えます。
それができずにいると、「面倒くさいからもう関わりたくない」と思われて、その後の関係性が希薄になり、大事なところで何も言ってもらえなくなったり、助けてくれる人がいなくなってしまったりするのです。
年齢や立場が高くなるほど、指摘してもらえる機会は減っていくので、十分に注意したいところです。
ネガティブなフィードバックを受けたときは、落ち込むこともあるかもしれません。それでも、まずは最後まで相手の話に耳を傾けて、すぐに反論したり、誰かを責めたりするような発言は控えましょう。
その相手に対して、イラッとした反応を示さずに、
・現状ではどこがいけなかったのか
・どう思われたのか
・本来どうすべきだったのか
という点に焦点を合わせ、相手が言ったことに対して耳を傾けることが得策です。
とくに上司の場合、部下からのフィードバックに対して、どのような受けとめ方ができるかによって、器の大きさが試されます。
何か伝えなくてはいけない事情がある場合でも、まずは相手の話を最後まで聴くことが大切です。
そのあとで、
「じつは、これには○○ということがあって…」
という順番で話をするようにしましょう。
ネガティブな話を聴くときには、相談される場合も、指摘を受ける際にも、聴き方が関係性に影響します。
相手にとっても自分にとっても、発展的な傾聴を心がけたいものですね。
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