日付:2024年05月10日
■聴き手の受けとめ方によって、相手のやる気にも差が出る
相手の話に対して、つい反論したり、打ち消したりするような言い方をしてしまったことはありませんか?
わたしのもとには
「子どもが自分の意見と違う場合に、つい頭ごなしに否定してしまう」
という相談も多く寄せられます。
聴き手の切り返し方によって、話し手のやる気が左右されるということを、親子の対話の例で解説します。
頭ごなしに否定してしまうのは、親として、
「こうあってほしい」
「自分のほうがモノをよく知っている」
「子どもは大人の言うことを聞いておいたほうがいい」
といった思いがわくからです。
では、具体的にどんな言い方をすればいいのでしょうか?
(例)子どもが「将来、宇宙飛行士になりたいんだ」と言ってきたとき
×「何を言っているの? そんなの無理に決まっているじゃない」
○「宇宙飛行士になりたいのね。どうしてそう思ったの?」
(例)子どもが「部活(お稽古事)をやめたい」と言ったとき
×「途中でやめるなんてダメだよ。飽きっぽいわね! 長く続けなくちゃ!」
○「やめたくなっちゃったんだ。どうしたの?」
いかがでしょうか。
後者のように、一度子どもの主張を受けとめると、子どもも「自分のことを尊重してくれた」という思いを抱きます。
そして、その後の話し合いの際に、こちらの言うことにも耳を傾けやすくなるのです。
これは、子育てに限らず、上司と部下という仕事の関係でも同じことが言えるでしょう。
自分と意見が異なったとしても、いったん受けとめたうえで、自分の考えをプラスするスタンスが大切です。
それは、相手のやる気を引き出すことにもつながります。
■相手に限らず、一歩踏み出して聴いてみる
一方、相手の意見に対して、
「こんな質問をしたら、馬鹿だと思われるかも」
「こんなことを聴くのは失礼なことなのではないか」
という思い込みを持っている人も多いものです。
「わからないことや疑問点をそのまま流してしまう」ということも多く耳にします。
とくに、相手よりも自分のほうが下の立場だったり、キャリアが浅かったりするときに起こりがちです。
「◯◯については経験がなくわからないので、教えてください」
と質問したからといって、失礼になったり馬鹿にされたりするとは限りません。
また疑問点についても、
「なぜこのやり方ではダメなのか、教えていただけないでしょうか」
と質問することは、決して相手と対立することではないのです。
むしろ、確認しないまま進めてしまうことでの弊害もあるでしょう。
また、相手の言うことと違う意見を持つのはいけないことではないかという思い込みを持ち、
「こういう意見はどうでしょう?」
と尋ねることすら躊躇してしまうという人もいます。
たとえ、相手が自分よりも経験豊富で立場が上だとしても、相手の発言や提案がすべて正しいわけでもありません。
もし、躊躇してしまうときには、思い込みの影響を受けていないかを振り返り、一歩踏み出して聴いてみると、お互いの理解を深めるきっかけにもなります。
相手や場面によって、よりよい傾聴法を意識していきたいものですね。
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