日付:2024年04月20日
■違う言葉を伝えることで、相手を傷つけてしまうこともある
相手の話を聴くとき、自分の解釈を加えて話してしまったことはありませんか?
話のポイントを繰り返し聴くのはいいのですが、自分の言葉や勝手な解釈、ときには自分の考えを相手が言ったかのように返してしまう人がいるので注意しましょう。
相手が言った通りの言葉で「◯◯ですね」「◯◯ということですね」と返さずに、自分のフィルターを通して違う言葉や、自分の解釈で返してしまうと、相手が違和感を覚えることもあります。
「そんなことは言っていない。正確に理解してもらえていない」
と不信感を抱いたり、ときには傷つけてしまうこともあるかもしれません。
研修中に、ある40代の女性Cさんが、同じグループのDさんに、「人前で話すとき、かなり緊張してしまって、うまく話せなくて。それで、あとで、あ〜あ、また話せなかったな……って落ち込むことがあるんですよね」
と伝えたところ、Dさんが、
「緊張しすぎてうまく話せないことがあるんですね。それは情けないって思いますよね」
と返したところ、Cさんは、
「……ですよね。情けないですよね、わたし……」
と涙ぐんでしまいました。
Cさんは「情けない」という言葉を使っていません。
聴き手のDさんは共感したつもりだったのですが、自分の意見を乗せて言葉を返したことで、寄り添うどころか傷つけてしまったのです。
■相手を傷つけてしまった場合は、すぐに訂正しフォローすることが不可欠
このときは、わたしが介入し、
「Cさんは、大勢の前で緊張して落ち込むことがあるということをわかってほしかったのだと、わたしは理解しましたよ。もしよければ、どんな気持ちになって、どうしたいのか、研修後に時間をとるのでお聴きしましょうか?」
と言って、個別にお話をお聴きすることにしました。
Cさんにしてみれば、言っていたことに対して、「それは情けないことだ」と言われてしまったため、「こんなに落ち込むことも、緊張して話せないことも情けないことなのだ」と受けとめ、涙が出てしまったのでした。
自分でも気にしている悩みについて引っかかる言葉を返されたとき、たとえワンフレーズであったとしても、傷ついてしまうものなのです。
そのほかにも、相手に勝手な解釈をされたことで、
「わたしはそんなことまで言っていないし、そこまで言わなくてもいいじゃないですか!」
と、怒り出す人もいます。
こういったコミュニケーションのずれを起こさないためにも、相手の話に集中して傾聴し、基本的には言った言葉をそのまま返すようにしましょう。
言葉をすり替え、自分の感じたことを無意識に差し込んでしまいがちな人は、日頃から注意を払い、もしそのような発言をしてしまったときにはフォローをすることが必要です。
違う言葉で言い返してしまったことに気づいたら、すぐに
「失礼しました。言いたかったことはこうですよね」
と訂正しましょう。
「ごめんなさい。いまの言葉は、わたしの勝手な解釈でしたね。○○さんが言っていない言葉でした」
「つまり、こういうことだったんですよね」
このように言い直し、相手の言葉に戻ってください。
仕事でもプライベートでも、思いがけずコミュニケーションのすれ違いが起こることはあります。
もし、起きてしまったときには、できるかぎりその場で解消することを心がけたいものですね。
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