日付:2024年04月10日
■価値観の相違がパワハラにつながることもある
「そんなつもりではなかったのに、パワハラ問題につながってしまった…」
こんな経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。
昨今では、価値観もますます多様になり、受け取り方もさまざまです。
ある企業の営業部にてマネージャー職についているBさん(50代男性)は、売上(数字)の実績が高く、仕事熱心な人でもあるのですが、部下から「パワハラをされた」という声が人事宛に複数持ち上がっていました。
Bさんは完璧主義で、自分にも相手にも厳しく、一度やると決めたことは、絶対にやるべきだと考えるタイプです。
そのため、部下に対して、「なぜ、自分でやると言ったのにやらないんだ」「努力が足りないのではないか」といった不満を持っていました。
そこで、Bさん自身に振り返っていただいたところ、
「部下にただ話を聴いてほしいだけだったのに、『ちゃんとわかっているのか。聴いているのか!』『なぜ、わからないんだ!』と語気が荒くなり、相手も責められているように感じたのかもしれない」
と気づきを吐露されたのです。
■「当たり前」は人によって異なるもの
Bさんの場合は、部下に、どういうところでつまずいて、なぜ結果が出なかったのか、困っていることはないのか…、といったことを聴く必要がありました。
部下の声に耳を傾け、現状把握をし、どうすればいいのかを一緒に考えることが重要だったのです。
わたしとのやりとりを通して、Bさんは次のことに気づいたといいます。
「自分がここまでの地位を築くにあたって、努力を重ねてきた。やると決めたことは徹底的にやってきたからこそ、『何が何でもやるべき』という気持ちがかなり強く、それが当たり前だと思い込んで、押しつけていたのかもしれません」
「当たり前」「常識」「当然」「普通」という言葉が思い浮かんだら、気をつけてみてください。
つい、自分の考えや価値観を「当たり前」「常識」だと押しつけ、相手の話に耳を傾けられなくなってしまうケースを、日々耳にします。
自分にとっては当たり前のことでも、相手にとってそうとは限りません。
まず、相手の言い分にも耳を傾ける姿勢を、忘れずにいたいものです。
■自分は聴けているか振り返ってみよう
Bさんは、そもそもとても熱心な人なので、「いろいろな意見を自分の価値観で押しつけてしまったけれど、結局、自分の話を聴いてほしかっただけだった」と気づいたあとは、なんとか変わろうと努力されています。
マネージャー職の人から相談を受けるなかには、パワハラ問題にまで発展しなくても、
「部下は、わたしの話をちゃんと聴いてくれないんだよ」
という言葉がよく出てきます。
もし、聴いてほしいと思う気持ちがあるのならば、
「自分は、部下の話をきちんと聴けているのか?」
と、省みる時間が必要かもしれません。
まずは、自分の行動から振り返ってみましょう。
■立場が高い人ほど、先に要求を伝えてしまいやすくなる
自分の立場のほうが高い場合、相手の話を聴くことよりも、先にこちらの要求を伝えることが多くなってしまいがちです。
じつは、これは過去のわたし自身にも言えることでした。
子どもに対して、
「おかあさんの話をちゃんと聴きなさい」
と言いながらも、忙しくて、逆に子どもの話をきちんと聴けていないときもあったのだろうなと思い返すことがあります。
子どもは、「いや、だったらぼくの話だって聴いてよ」と思っていたかもしれません。
親や上司ほど、こちらの要求を先に伝えてしまいやすくなります。
相手に話を聴いてほしいときには、いつも以上に自分が聴けているのか、意識を向けてみてください。
不本意なパワハラ問題を避けるためにも、まずは相手の話に耳を傾けることを定着させていきたいものですね。
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