日付:2023年12月10日
■自分の意見は横に置いて聴く
人の話を聴くときに、あなたはどんなことに気をつけていますか?
自分にとって興味・関心のあることや、自分と同じことで困っている話を耳にしたとき、自分の話をし始めてしまうことはないでしょうか。
たとえば、人から
「○○タイプのお客様がいて、とても難航して困っている」
という話をされたときに、
「わたしも! まさにそういう合わないお客様がいて困っていて…」
と自分の話を始めてしまうと、いつの間にか相手の話を奪ってしまっていることになります。
たとえ自分にとってタイムリーなテーマであっても、相手に
「わたしの話を聴いてほしかったのに…」
という思いをさせない注意が必要です。
とくに、相手から相談を受けたときには、自分の話を横に置いて、
「そういうことがあったんだね。それはどんな状況?」
「ああ、そうか。そういうことってあるよね」
と聴く姿勢を保ちます。
もし、自分のことを言うとしても、
「うん、わたしもそういうことがあるよ」
という程度の返事がいいですね。
自分の相談をしたいのであれば、相手が話し終わって、余裕がありそうなときに
「じつは、わたしにも同じようなことが最近あってね…」
と伝えてみてはいかがでしょうか。
相手が100%のうちの10%ほどしか話していないのに、話し手と聴き手が完全に逆転しないように気をつけたいところです。
まずは相手の話を聴き、相談を受けている側であることを意識してみてください。
■「相手の話したいことは何か」を意識して聴く
アクティブ・リスニングとは、話を聴いているということが、話し手に伝わるように表現する聴き方のことです。
議論を交わし合うディベートとは違って、基本的には相手の言っていることを理解し、相手の言いたいことをまず引き出すことが主になります。
ですから、
「わたしにも同じ経験があって」
「わたしだったらこう考えるよ」
といった自分の意見は、話の最後のほうに伝えるといいでしょう。
企業でのリーダー層以上を対象にした企業研修では、1on1ミーティングというテーマを求められることが増えてきています。
その背景として、1on1ミーティングの場が、「部下への事情聴取」のようになってしまっていることも理由のひとつです。
実際のところ、
「お客様との関係で困ったことはない?」
「仕事の進捗はどう?」
というように、上司の知りたいことをヒアリングする場になってしまっているケースが多くなっています。
せっかくの場を一方的に終わらせないようにするには、上司側にも部下側にも、聴く力が必要です。
アクティブ・リスニングを意識して、質問しながらも相手の話したいことを引き出していきましょう。
■自分の知りたいことだけを聴いていないか
ある企業のマネージャーから、「部下と1on1をしたところ、うまくいかなかった」という相談を受けたことがありました。
評価面談という主旨だったため、部下に対して次のような質問をしたそうです。
「掲げた目標数値のどこまで達成できたの?」
「5割までしかできていないとすると、その要因は?」
「その要因をもっと具体的に話してくれないかな?」
「それで今後、どういう計画を立てるの?」
「その計画も達成できる見込みはあるの? そこを具体的に話してくれないかな?」
その結果、部下から納得のいく回答が得られないので、
「そんな話しか聞けないと、評価することができないよ」
と伝えたら、
「それならそれで仕方がないです…」
と切り返されたとのことでした。
なんだか後味が悪く、今後も面談はあるので、どういうことに気をつけたらいいか把握しておきたい、ということで一緒に振り返りました。
ご自身でも顧みたところ、上司として知りたいこと、納得のいく回答を得るための問いかけしかしていない時間になっていたことが、明確になったのです。
部下がどう考えているのか、困っていることはないのか、思った結果が出なかった背景や事情にはどういうことがあったのか…。
それらに、耳を傾けることができていませんでした。
このようについ、1on1ミーティングが自分のためだけの時間になってしまうという話はよく耳にします。
相手のための時間でもあることも意識したいものですね。
そうすることで、より相手との信頼も深まり、いい関係を築いていけるのです。
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