-COLUMN-

言葉によるすれ違いを防ぐコツとは?

日付:2023年04月20日

■抽象的な言葉はすれ違いを起こしやすい

 

日常のなかで、つい抽象的な言葉を使ってしまうことはありませんか?

とくに、「ちゃんと」「しっかり」「思いやりのある」といった言葉をよく使っている人は、注意が必要です。

 

「しっかりやってね」

「ちゃんと確認してね」

「もう少し相手の立場に立って考えて行動しようよ」

「メールの返信は早めにしてね」

「もっと思いやりのある言葉を使ってみて」

 

このように、人によってどの程度のことを意味するのかが曖昧な、共通認識にならない言葉を選んでしまったとき、自分が期待する程度と相手が認識する程度が異なり、すれ違いを起こしやすくなります。

 

なかには阿吽の呼吸が通じ、「ちゃんと」と言ったら、自分の期待する通りの「ちゃんと」を理解してくれる人もいるでしょう。

ただ、たとえ長年一緒に過ごしている家族やパートナー、ずっと仕事で関わっているメンバーであったとしても、共通認識がすべて一致するとは限りません。

だからこそ、相手と誤解のない言葉ですり合わせをしていくことが大切なのです。


 

■認識のズレを防ぐには、具体的に行動しやすい表現をする

 

Aさん「ちゃんと確認してね」

Bさん「ちゃんと確認したんだけど…」

Aさん「ちゃんと確認していないじゃないか!」

 

このような言葉の認識のズレによる、些細な言い合いや行き違いは、さまざまな組織で起こっています。

抽象的な言葉をどう認識するかは、これまで歩んできた道、生きてきたキャリアや背景によって、大きく違ってしまいがちです。

 

最近、笑い話として聞いた話では、40代男性が営業職の新入社員に、

「営業なのだから、ガンガン営業してビシッと決めろ」

と言ったところ、真面目な顔で、

「ガンガンいってビシッと決めるって、どういうことですか?」

と質問されたそうです。

そこで、もう、こういう言葉は通用しないと気づいたとのこと。

 

「もっと丁寧な対応をしてね」

「もっと主体的な行動をしましょう」

「手が空いたらやっておいてください」

「もっと一生懸命やってほしい」

「もっと誠意のある姿勢で取り組みましょう」

 

このような抽象的な表現をする場合、その言葉をどのように認識しているのかというところまですり合わせることが、これまで以上に必要になってくるかもしれません。

 

とくに、「時間」や「期限」に関することであれば、「早めに」「近いうちに」といった曖昧な表現ではなく、「何分以内」「何日までに」と具体的に伝えることが得策です。

言われた側が、その通りの行動をとれるような表現を心がけましょう。


 

■相手がどうとらえたのか、認識をすり合わせよう

 

人によって、言われたことのとらえ方や解釈の仕方は、違う可能性があります。

ある企業でリーダーを務めるAさんは、日頃から同じ部署のメンバーに対して、

「業務は皆で協力して取り組み、手が空いたらお互いに手伝うようにしましょう」

と伝えていたとのことです。

 

ところが後輩Bさんは、自身の仕事がひと段落してもほかのメンバーを手伝う様子も見られず、協力的ではないと見受けられることがたびたびありました。

そこであるとき思い切って、

「Bさん、もし担当業務がスムーズに終わることがあったら、Bさんにも同じチームの仕事を手伝ってほしいと思っているんだ」

と伝えたところ、

「手伝おうという気持ちはありました。じつは、担当業務外のことを経験のない後輩の自分がどこまで手を出していいものか。どう声をかけていいのか迷うことがあって…」

と言われ、はっとしたそうです。

 

そのとき、手伝う気持ちがないと決めつけてしまった自分を反省し、

「手伝えるゆとりがあるときは、『手伝えることはありませんか?』と周囲に声をかけることからしてみてね」

と伝えて、ほかのメンバーにも共有したとのことでした。

 

このように、勝手に「こうだ」と思い込むことなく、どうとらえたのかをすり合わせることも大切なことなのです。

行動に移しやすい具体的な表現を意識して、コミュニケーションのズレをなくしていきたいものですね。

 

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