日付:2022年11月10日
■自分のなかにある「こうあるべき」を洗い出してみよう
米国で生まれた、怒りの感情と付き合うための心理トレーニング法「アンガーマネジメント」では、「怒る必要のあることには上手に怒り、怒る必要のないことは怒らないようになれること」を目指しています。
怒りと上手に付き合うには、まず、怒る必要のあることとないことの線引きをすることが大切です。
そもそも、なぜ怒りが生まれるのでしょうか。
怒りとは、自身の「べき」が思う通りにならないときに抱く感情です。
「べき」とは、自分の理想、願望、期待、譲れない価値観を象徴する言葉のことです。
この自分のなかにある「◯◯であるべき」という感情を洗い出すことで、怒りを整理しやすくなるのです。
どうしても譲れない「べき」は何なのか。
「◯◯すべき」と思ってはいても、許容範囲の程度のものなのか。
どうしても譲れないものは怒る必要のあること、そこまでではないことは、あえて怒らなくていいこと、と線引きを明確にしてみてください。
線引きできると、怒りの感情を扱いやすくなります。
■「思考のコントロール(三重丸)」方法で線引きする
怒りを感じたことを表現する際、アンガーマネジメントでは、
「◯◯してほしい」
とリクエストとして伝えることを大切にしています。
ただ、
「相手にこうしてほしい、こうあってほしい」
と伝える際にも、何をどこまで伝えるのか悩むことはありませんか?
「どうしてほしいと思っているのか」
「どこまでがOKでどこからがNGなのか」
人に伝える際には、「思考のコントロール(三重丸)」という手法を使って、線引きのポイントを明確にするといいでしょう。
①許せるゾーン…自分の「こうあるべき」と同じ。100%OKな範囲
②まぁ許せるゾーン…①に当てはまらないので、多少イラッとはするけれど、許容できる
③許せないゾーン…許容できない。怒る必要がある
アンガーマネジメントでは、②と③の間の境界線が、怒る必要のあることと、ないことの境界線と考えます。
ここを明確にするために、まず②の範囲を設けましょう。
①のみしか許容できない場合、許容範囲が狭く、当てはまらないことが多くなるためイライラしがちになるのです。
「せめて◯◯だったらOKにする」
「少なくとも◯◯はしてほしい」
「最低限○○であればよしとする」
というように、「せめて」「少なくとも」「最低限」という言葉で、「②まぁ許せるゾーン」を設けることを検討してみてください。
このとき、「ちゃんと」「しっかり」「早めに」「丁寧に」という言葉を使わないのがポイントです。
境界線を曖昧な表現にすると、正しく共有できなくなってしまうからです。
なかには、自分自身の機嫌や気分で境界線がぶれてしまう人もいます。
だからこそ、
・何をしてほしいのか、何を望んでいるのか
・どこまでならOKで、どこからをNGとするのか
・言うか、言わないか
をジャッジするために、この三重丸を使って境界線を明確にする必要があります。
もしも②にするか、③にするかで迷ったら、後悔するかしないかをジャッジの基準にしてください。
また、アサーティブには「言わない」という選択もあります。
後悔しないのであれば
「言わなくてもいいな。今回は言う必要はないな」
と判断してもいいのです。
この境界線については、自分の責任のもとで判断することが重要です。
決断したあとの結果については、誰のせいにもしないようにしましょう。
■自分の感情を整理したうえで、思いを伝えよう
実際にあった、ある企業の営業部の30代後半の男性・Aさんの事例をご紹介します。
Aさんは、交代でリモートワークをしていて、チーム内での情報共有は社内チャットを使っているそうです。
「日頃はそれぞれの営業先に出かけ、皆で顔を合わせることがないからこそ、情報共有が大事だと思っています。それなのに、8人いるメンバーに対してチャットで営業先の情報を共有しても、「いいね」しか押されません。とくに営業先の情報の共有をしたら、それについて意見を交わすべきなので、『いいね』だけの反応はありえないと思っています」
と言うのです
ただ、確認したところ、このことをAさんはメンバーには伝えていませんでした。
言わずにいることでストレスが溜まっている様子だったので、まず最初に、三重丸で相手へのOK・NGの境界線を検討してもらいました。
1 チャットにて共有した情報に対して、自分の意見かアドバイスがある
2 忙しくてアドバイスや意見が入力できない日、タイミングもあると思うけれど、せめて「共有ありがとう」「わたしもやってみます」といった短いメッセージでいいので、何か言葉を返す
3 無反応、または「いいね」のみ
このように分けることで、頭のなかが整理されていきます。
そこからさらに、アサーティブに周囲の人に伝えるには、
×「チャットに営業情報の共有をしたら、ちゃんと反応を返してほしい」
といった抽象的な表現ではなく
◯「提案があります。チャットにて営業先の情報共有をしたら、皆の意見かアドバイスを返してほしいのです。忙しいときもあると思うので、せめて『ありがとう』『やってみます』というように、ひと言でもいいので何らかの言葉を返してくれたらと思っています。
無反応や『いいね』だけというのは、なしにしようということを言いたかったんです」
このように伝えるといいでしょう。
Aさんは、実際に◯の表現例をミーティングで伝えることができたことで、まわりの人の行動も変わっていったそうです。
このように、自分の「こうしてほしい」という願いを相手に伝える際には、この三重丸で整理すると、周囲にも要望が届きやすくなるでしょう。
もし、言いにくいと感じることがあっても、まわりといい関係を築きながら、自分の思いを整理して伝えられるといいですね。