-COLUMN-

繊細な人に注意を促すときに、心がけたいこととは?

日付:2023年07月10日

■相手のペースを待ちながら、穏やかにゆっくり伝える

 

相手が繊細なタイプの場合、何かを伝えるときに苦慮する管理職の人は多いのではないでしょうか。

 

繊細な人・HSPの人(生まれつき非常に感受性が強く、敏感な気質を持った人)の場合、注意することや叱ることといったネガティブフィードバックと呼ばれるものを、必要以上に気にして、落ち込んでしまう傾向があります。

 

なかには、声が大きい、語調が強いと感じるだけで、責められたと思う人もいるので配慮が必要です。

落ち着いた口調で、穏やかに、声も大きくならないように、

「◯◯についてなのだけれど、今後、□□のようにしてほしいと思っています」

と伝えていきましょう。

 

ほかにも、一度に複数のことを伝えると混乱する人もいるので、要点をひとつに絞るのもポイントです。

 

「これがいけない」

と注意する言い方ではなく、

「◯◯を□□のように直してほしい」

というリクエスト(要望)として伝えるといいでしょう。

 

もし期限や期日を守らない、ミスが多いという場合では、

「◯◯さん、仕事の期限についてのことなんだ。こういうところのミスがみられるから、見直しをして□□のように取り組んでほしい」

「いま約束している期日について、進捗が遅れ気味だから、◯月◯日までの期日に間に合うようにしてほしいんだ。遅れそうな事情があるのなら、遠慮なく教えて」

と、ゆっくり間を持って言うようにしましょう。

 

相手の理解を待つ時間を持たなければ、考えがまとまらないこともあります。

繊細な人の場合には、こちらが尋ねてから、相手が返答するまでの間を待ってあげる姿勢も必要なのです。

 

■誤解を生まないように表情にも気を配ろう

 

繊細で感受性の強い人とやりとりするときには、言葉だけでなく、顔の表情にも注意が必要です。

たとえば、以前こんなケースを耳にしました。

 

「◯◯さん、これについて、今後どうしたいと思う?」

と聞いたときに、相手が戸惑った表情をしているのが気になって

「言葉に詰まった気がしたけれど、どうしたの?」

と尋ねたところ、

「『何を言っているんだ』という顔をされて戸惑ってしまったんです…」

と言われたそうなのです。

 

振り返ってみたところ、このやりとりの前に、思い当たることがあったとのこと。

相手から受けた回答が想像もしないことだったため、それを受けとめようと考えていた表情が、相手には「何を言っているんだという顔」として映ってしまっていたようです。

 

相手からのこの言葉が出てくるまでにも、長く時間がかかっていたとのこと。

待てない人は、3秒もとても長く感じるものですが、相手が考えているような表情や、上を向いたり下を向いたりする素振りをしたら、20〜30秒ぐらいは話を待ってあげてください。

 

待っている側からすると30秒は長く感じるものですが、できれば、

「思ったことを口にしていいんだよ」

「まとまっていなくてもいいよ」

と伝えながら待ちましょう。

 

その間、凝視してしまうと相手は緊張してしまいます。

オンラインであれば、相手と目を合わせないように、下を向いたり、違うほうを向いたりして相手がプレッシャーに感じてしまうことを避けるといいですね。


 

■非主張的な人に対して、したほうがいいこと、しないほうがいいこと

 

相手に何か注意をしたあとは、フォローも大切です、

「これから先も一緒にしていきたいから、話せてよかった」

「これからもよろしくね」

と伝えておくことで、繊細な相手に安心してもらうことができます。

 

自分を抑えて相手を立てる自己主張をしがちな「非主張的なタイプ」のなかには、警戒心が強く、簡単に心を開かない人もいます。

ですから、対峙する際の心構えとして、「急がない」「焦らない」という気持ちを持ち、1回で関係を築こうとしすぎないことも大切です。

 

心を開いてもらうには、こちら側から自己開示をするのもいいでしょう。

「わたしも、そんなことがあったよ」

「言いにくいことは、わたしだってあるよ」

というように、先に自己開示することで、相手も話しやすい関係性をつくっていくことができます。

 

そのほか、一方的に話をすると、相手が言うタイミングをつかめなくなってしまうことも…。

話すペースが速いと、相手が意見を言う間がなくなってしまうため、一方的に、早口でまくし立てないようにしましょう。

こちらが、少しでも焦ったり、イラついたりする素振りを見せることも避けたいものです。

 

変な意味に受け取られないように、表情にも気をつける必要があります。

たとえば、目線が下を向いている状態で、「ん〜…」と考え事をする表情も、誤解を与えてしまうことがあるので注意しましょう。

顔が見えているときには、穏やかな表情でいることを心がけてください。

 

上司から「で?」と聞かれることをプレッシャーに感じているという人から相談を受けたことがあります。

「で?」と何度も聞かれると、何も言えなくなってしまう人もいるので、自分の口ぐせにも気をつけたいところです。

 

繊細な人の特徴を心得て、いい関係を築いていけるといいですね。


 

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