-COLUMN-

相手の本音を引き出したいとき、どう傾聴する?

日付:2024年01月20日

■気になる反応は見逃さずに確認する

 

会話のなかで、自分の好意が伝わらず、誤解されてしまったことはありませんか?

「自分が投げかけた内容に対し、相手から期待する反応が返ってこないことがある」

最近とくに、こういった相談も多くなりました。

 

たとえば、産休明けや育休明けの時短勤務の人に負担をかけてはいけないと思い、

「これ以上の仕事は無理しなくてもいいよ」

「このミーティングは、残業になるから出なくていいよ」

と伝えたところ、

「ありがとうございます」

という返答ではなく、とても微妙な顔をされることがあるそうです。

 

相手の顔がくもる、目を合わせず下を向いてしまう、といったサインが出たときには、見過ごさず、

「何か気になることがある?」

「少し表情が変わったように見えたけれど、何か思ったことがある?」

と、一歩踏み込んで尋ねてみてください。


 

■こちらの善意が伝わらないこともある

 

相手の負担を思って遠慮したことで、かえって誤解を招くこともあります。

「わたし、戦力外通告をされた?」

「本当はそれをやりたかったのに、育休明けで時短勤務だとダメだということ?」

「お荷物になってしまいますよね……」

と受け取られたり、不満を持たれたりすることが少なくありません。

 

近年は、いろいろな働き方が提唱されています。

育児や介護で時短勤務しているスタッフに対して、よかれと思って

「あなたは出なくていいよ」

と言うことだけが、適切な判断ではないのです。

相手の希望に沿う答えを見つけるには、やはり聴く力が欠かせません。

 

先日、ある企業の管理職の女性から、

「多様な価値観や考え方がある時代だからこそ、こちらの思い込みで判断してはダメですね。本人に確認してよかった!」

という話を聴きました。

 

その女性には、2カ月前にキャリア採用した女性部下がいるそうで、彼女には5歳と3歳の2人の子どもがいます。

小さい子どもが2人もいるのだから、出張は難しいだろうと思ったけれど、一度確認してみようと思い、

「◯◯さん、やはり出張は難しいよね?」

と尋ねてみたところ、

「え? そんなことはないですよ。大丈夫です。むしろ行きたいです。前日に急に依頼されるのは難しいかもしれませんが、今回は2週間後の予定ですから問題ありません」

と言われたとのこと。

 

つい自分の思い込みで、相手に確認せずに判断することはないか、わたし自身も省みる機会になりました。

自分は必要とされていないと思い始めると、いつもより反応が鈍くなったり、相談をしなくなったり……と、コミュニケーションの仕方が変化していくこともあります。

 

とくに職場では、最初の相手のサインを見逃してしまったことで、気づいたら相手のモチベーションが下がっていた、辞める決断をされてしまったということは、よくあるケースです。

そうならないためにも、「おかしいな」と気になったときに、相手がどう感じたのか、どうしてほしいと思っているのかをしっかり確認できるよう心がけましょう。


 

■心を通わせ合うために相手を観察しよう

 

うわべだけのコミュニケーションをとっていると、相手の心が置き去りになってしまうケースがよくあります。

手遅れにならないためには、些細なすれ違いの段階で気づけるよう、相手を深く観察して、気をつけていきたいところです。

 

コミュニケーションでは、相手が口に出したことに耳を傾けることだけが目的ではありません。

相手の真意を引き出し、心を通わせ合うことも必要になります。

聴くことは、コミュニケーションの手段のひとつだと認識し、自分からも歩み寄っていきたいものですね。


 

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