日付:2023年01月10日
■ゴール設定を見直してみよう
「NO」と言うこと=悪い、という思い込みを持っている人は多いのではないでしょうか?
「交渉」は、「NO」から始まるコミュニケーションです。
お互いの要求が異なることから始まる話し合いであり、喧嘩すること、論破することが目的ではありません。
ですから、「NO」と言うことは悪いことではないのです。
どんな人が相手であっても、最初から同じ意見になることは難しいもの。
たとえ長年付き合った同僚や友人、家族でも、すべての場で同意見とはいかないでしょう。
違う意見を持っていることや引き受けられないことがあれば、議論を交わしていいのです。
すべてのことを話しもせずに丸くおさめようとするのは、とても不自然で不健全なことだと思いませんか?
話し合いやミーティングの目的は、丸くおさめることではありません。
どこにゴールを設定しているのかを見直してみると、「交渉」で意見を交わしたり、「NO」と言ったりすることができるようになるでしょう。
■無理に同意してしまうことで新たなストレスになる
相手の立場が強い場合や、利害関係の絡む取引先が相手の場合、相手のほうが自分よりも専門的な知識やスキルがあったりする場合、
「『その要求は無理だ。話が違う』と心のなかでは思っていても、つい『わかりました』と言ってしまうんです…」
という相談をよく耳にします。
こういった人の多くは、相手の無理な要求を受け入れないと、
・上司の意見には「おっしゃる通りです」と言わないと、そのあとの関係性や評価に影響しないか怖い
・取引が打ち切りになってしまうかもしれない
・嫌われてしまうのでは…
という思いから、無理して同意しがちです。
自分の言いたいことがうまく言えなくなって、同意をするという選択をした場合、後々になってから
「どうして引き受けてしまったのだろう」
「なぜ、あのときNOと言わなかったのだろう」
と、後悔して自己嫌悪に陥ってしまうことも…。
そうすると、
「こんなことを引き受けて、大変なことになってしまった」
と悶々とすることが新たなストレスとなり、ひとりで負の感情を抱え込むことにもなりかねません。
引き受けてしまったのは自分の責任だとしても、次第に相手に対して恨みがましい思いを持ち続け、悩んでいるという相談もよくうかがいます。
こういったときには、目の前のことだけでなく、無理に同意したその先の未来まで想像してみることで、相手への伝え方も変わってくるのではないでしょうか。
■お互いの立場や主張を大切に、自己表現できればいい
アサーティブ・コミュニケーションの研修後、しばらく経ってから、
「わたしがアサーティブに言ったのに、相手が聴いてくれません」
「相手が自分の言った通りにしてくれません」
「言った通りに話が進まなかった…」
といった相談を受けることもあります。
こちらのブログでも何度かお伝えしているように、アサーティブ・コミュニケーションは、お互いの立場や主張を大切にした、自己主張・自己表現のこと。
もちろん、アサーティブではない相手もいますし、相手は相手なりの主張や考えもあり、当然、自分が言った通りに話が進まないこともあるでしょう。
たとえば、相手に耳の痛いことを伝えるときに、いくらこちらが相手を責めずに適切な言い方をしたとしても、相手がそれを受けとめられない器の人の場合、あからさまに嫌な顔をされることもあるものです。
クレーム対応でも、同じことがいえます。
お客様の要求が飲めないということを、いくら真摯にアサーティブに言ったとしても、自分の要求が通らないことに怒って電話を切ってしまう人もいるでしょう。
こちらがアサーティブに伝えたとしても、相手が自分の望む反応をしないこともあるということを、知っておいてください。
「わたしがアサーティブに伝えたのだから、怒らずに気持ちよく受けとめるべきだ。相手もアサーティブに伝えてくるべきだ」
とは思わないほうがいいでしょう。
相手の感情も相手の出方も、こちらでコントロールできるものではありません。
だからこそ、コミュニケーションのゴール設定は、
・自分の思い通りに相手が動いてくれた
・場が丸くおさまった
ということを結果の基準にするほど苦しくなってしまいます。
そうではなく、
・自分は自分の伝えたいことを、相手にアサーティブに伝えた
というところをゴールに設定すると、心がラクになっていくはずです。
相手の話を傾聴し、理解を示していれば、同意はかならずしも必要ではありません。
コミュニケーションは、訓練によって磨かれていきます。
「場をおさめる」のではなく、「自分の伝えたいことをアサーティブに伝える」ということを、ぜひ日頃から心がけてみてくださいね。