日付:2023年04月10日
■事実と主観を分けて伝えよう
言葉の選び方が、相手への伝わりやすさを左右します。
今回は、相手に受けとめてもらいやすい、言葉の選び方のコツについて解説していきましょう。
上司側にも部下側にも言えることですが、報告・連絡・相談をするときには、事実と主観を分けて伝えるのが鉄則です。
注意したり、叱ったりするときにも、この点はとくに重要です。できていないと、言われた相手は混乱し、なかには主観の部分に過剰反応する人も出てきてしまいます。
◯「この1ヵ月でミスが5回続いているよ。わたしから見ると、最近集中力が欠けているように思えるのだけれど、どうかな」
→事実:この1ヵ月、◯◯のミスが続いている
→主観:そういったことから、最近集中力が欠けているように思える
このように分けて話せるといいでしょう。
×「いつもミスが続くけれど、あなた、本当にやる気がないよね。集中力が欠けているよね」
これでは決めつけのような表現になっているので、言われた側は、イラッとしたり、聞く耳を持たなくなったり、落ち込んだりしてしまいます。
「いやいや、やる気がないわけじゃないし、集中力が欠けているなんて、ちょっと言いすぎじゃない?」
と反発を招いて、肝心の話が進まなくなってしまうことも…。
こうなることを避けるためにも、相手に注意を促すとき、叱るとき、何か意見を言わなければいけないときには、事実と主観を分けて伝えるように意識しましょう。
■言葉の選び方で相手の受けとめ方が変わる
注意したり、相手に何かネガティブなフィードバックをしたりする場合、選ぶ言葉によって、相手の受けとめ方や反応は大きく変わります。
言いたいことを伝えるときに、主観や思い込みが入ると、どんなトラブルに発展してしまうのか、実際の例を挙げて解説しましょう。
(例)部下が正確な報告をしてくれなかったケース
ある営業部の上司Bさんから寄せられた相談です。
あるとき、部下からお客様の情報共有がなく、お客様から、
「◯◯さんから聞いていないの?」
と言われてしまったことがありました。
このとき、部下は自分に都合のいい情報しか言いたくないのだろうと思い込み、部下に
「顧客のやりとりをするときは、嘘をつかないでほしい」
と叱ってしまったとのことでした。
このケースの場合は、「嘘はつかないで」と言ったことで、「嘘はついていません」というやりとりに発展してしまいました。
実際に、部下は嘘をついていません。
事実は、部下から報告がなかった情報をお客様から聞いたということだけです。
このようなときには、次のように伝える必要があります。
◯「お客様とやりとりをしたときの報告は、正確に、漏れなく、わたしに共有してほしい」
◯「お客様から、『この話を聞いていないの?』と指摘されたんだ。わたしはまだ知らない情報だったから、どういうことだったか教えてくれないかな。今後、お客様から聞いた情報は、わたしに漏れなく共有してほしい。そうでなければ(なぜかというと)適切な対応ができず、お客様に不信感を与えてしまうこともあるからね」
こう伝えれば、言われた部下は何がよくなかったのか、どうすればいいかがわかります。
(例)同僚が他部署との会議で、失礼な物言いをしてしまったケース
同僚が他部署との会議で、他部署のメンバーに対して
「そんな考えは甘いですよ。ちゃんと考えていますか?」
と強い口調で言ってしまったことがありました。
この場合、どう言えばよかったのでしょうか。
×「さっきの会議でのことだけど、あんなふうにバカにするような言い方はしないほうがいいよ。一緒に仕事をする他部署の人に失礼だよ」
実際には、上記の伝え方をして、同僚から「いや、バカにはしてないですけど!」と反論され、揉めてしまったそうです。
「バカにするような言い方」というのは、あくまでこちらの主観です。
相手が言葉にしたこと、とった行為という事実をもとに、
◯「さっきの会議で、『そんな考え方は甘い。ちゃんと考えていますか?』というような言い方をしていたけれど、そこまで言うのはやめたほうがいいと思うよ。これから一緒に仕事をしていくメンバーなのだから、□□と、伝えたほうがいいんじゃないかな?」
◯「さっきの発言は、わたしからするとちょっと厳しい言い方だったと感じたよ。これから一緒に仕事をする人たちだから、そういう言葉選びをしないで、たとえば、これについては『□□というように取り組んでほしい』と、相手に要望として伝えてはどうだろう」
このような伝え方で、アドバイスができるといいでしょう。
このほかにも、つい主観で話してしまっていることは多いものです。
×「あなた、やる気がないよね。集中力が欠けているよね」
×「わたしが言っても、どうせ聞いてくれないと思うけれど…」
これらの表現には、どちらも主観が入っていて、決めつけや卑屈な感情も言葉にあらわれているため、控えたほうがいい言い方です。
事実と主観が交ざっている状態では、相手に思わぬ受けとめ方をされ、関係性がこじれてしまいやすくなります。
このような事例から、注意をするとき、お願いをするときなどは、主観と事実を切り分けて話すことがとても大切だということがわかりますね。
客観的事実と主観を分けずに伝えた場合、言われた相手は
「決めつけられている。誤解されている。こんなつもりじゃないのに…」
と不信感を抱き、
「この人はねじ曲げて解釈する人だから面倒だ」
「自分の思い込みで判断する人だから、関わりたくない」
と距離を置かれてしまうことにもなりかねません。
反対に、適切な伝え方を心がけることで
「この人は、事実にもとづいて正確に判断してくれる」
と相手に感じてもらえると、信頼関係を深めていくことができるでしょう。
まず事実を確認し、相手の話に理解を示しつつ話し合いができることは、信頼関係の構築にもつながります。
そのためにも、日頃から、事実と主観を分けるクセづけをしていきたいものですね。