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無意識にやってしまっていませんか? 人とわかり合うことをはばむ種になる「アンコンシャスバイアス」とは?

日付:2023年01月20日

■無意識の思い込みが、人との行き違いを生む

 

アンコンシャスバイアスという言葉を聞いたことがありますか?

 

日本語では、「無意識の思い込み」「無意識の偏見」と表現されることもある概念です。

アンコンシャスバイアス研究所代表の守屋智敬さんは、「無意識に『こうだ』と思い込むこと」と表現されています。

無意識というのは、「気づかずに」「知らず知らずのうちに」ということです。

意識できていることは氷山の一角だといわれているので、普段わたしたちは気づかないうちに、多くのアンコンシャスバイアスを持っていることになります。

 

アンコンシャスバイアスは、過去の経験や、見聞きしてきたことによって生まれます。

誰もが持っていて、日常にあふれているものなのです。

でも、気づかずにいると、次のような影響が出てしまうことがあります。

・否定的になり、新たな発想が生まれなくなる

・イライラすることが増える

・適正な判断や評価ができなくなる

・自分の成長機会や可能性を失ってしまう

・知らず知らずのうちに人間関係に支障をきたし、ハラスメントにつながる

 

アンコンシャスバイアスによって、お互いの主張や立場を大切にした自己表現をするという「アサーティブ」になれないこともあるため、まずは自分の思い込みに気づくことが大切です。


 

■よくあるアンコンシャスバイアスの例

 

アンコンシャスバイアスには、わたしたちが普段意識できていないだけで、さまざまなものがあります。

次のように思うことはないでしょうか。

「事務職は、一般的に女性がつく役割である」

「あの人は文系だから数字に弱い」

「上司が言うことが絶対だ、間違いない」

「(挑戦する前から)わたしには無理だと思う」

「『単身赴任』という言葉を聞くと、女性ではなく男性のことだと思う」

「茶髪でカラーコンタクトをしている人は、チャラチャラしているのではないか…」

「九州の人はお酒が強い」

「血液型がB型の人は大雑把でマイペース」

「食事や洗濯は、妻や母の役割だろう」

「普通は〜だ。みんな〜だ」

 

アンコンシャスバイアスを学んでいると、このような無意識の思い込みが日常生活のなかにあふれていることに気づきます。

 

わたし自身も、自分の持っているアンコンシャスバイアスに気づくことが多々あります。

たとえば、コロナ禍の影響で、いまは研修もオンラインで実施することが多くなりました。

オンライン研修を導入した当初、50代以上の役職者の人を対象にした研修では、

「この年代の皆さんは、オンラインに慣れていないので、機能の説明もしなくてはならないし、進行には時間がかかるだろう」

「チャットにコメントを入力するにも時間がかかり、入力する人も少ないかもしれない…」

こう考えていましたが、意外にもチャットに多くのコメントがあり、即リアクションボタンで反応を返してくださる人も多々いらして、とてもスムーズに進行ができて驚きました。

「意外にも…」と思ったことこそが、わたしのアンコンシャスバイアスだったのです。

 

無意識に思っている事柄自体を、いいか悪いかジャッジする必要はありません。

アンコンシャスバイアスは誰もが持っており、あること自体は悪いことではないのです。

まずは、日頃の自分の「判断」や「言動」にアンコンシャスバイアスの影響を受けていることはないだろうかと振り返り、気づけるようになるといいでしょう。


 

■無意識の思い込みに気づこう

 

アンコンシャスバイアスは、無意識なので、気づくのは難しいかもしれません。

次に、気づくための手がかりとして、どのようなものがあるのか見てみましょう。

「言われてみれば…」と思い当たることもあるかもしれませんね。

 

【アンコンシャスバイアスの代表例】

・正常バイアス…まわりが変化していたり、危機的な状況が迫っていたりしても「これくらいなら大丈夫」と自分に都合のよいように思ってしまう

(例)「わたしは大丈夫」「わたしは問題ない」

 

・権威バイアス…権威のある人が言うことは間違いないと思い込む

(例)「あの人が言うなら間違いない」

 

・集団同調性バイアス…まわりと同じように行動したくなる

(例)「わたしの意見も皆さんと同じです」「皆が〜と言っているから」

 

・確証バイアス…自分が正しいということを実証する情報ばかりを集める

(例)「やっぱりわたしは正しい」「わたしが正しいに違いない」

 

・ネガティビティバイアス…ネガティブなことのほうが記憶に残りやすい

(例)「前もこうだったからダメに違いない」

「前にもあの人に反発されたから、何か意見を言っても、またそうに違いない」

「前に皆の前で恥をかいたから、また恥を書くようなことしかできないかもしれない」

 

このようなアンコンシャスバイアスが働いてしまうと、発言や議論でも、相手に言いたいことを言えず躊躇してしまうのです。

でも、どのようなものがあるのか、知って気づけるようになることで、対処できるようになっていくでしょう。

 

自分のなかにある無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)に気づいて、アサーティブな自己表現ができるようになるといいですね。

 

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