日付:2022年11月1日
■どのような自己表現をしているか認識しよう
これまでのコラムで、アサーティブ、攻撃的、非主張的の3つの自己表現について解説しました。
普段、自分がどのようなコミュニケーションをとっているか、客観的に見ることができているでしょうか?
アサーティブ・コミュニケーションでは、自己認識できることを大切にしています。
意識してみると、
「いま、とても嫌なコミュニケーションをとってしまったな…」
と感じることもあるのではないでしょうか。
そんなときは、まず自覚することが、改善の糸口になります。
もし言える相手であれば、気づいたときに、
「さっきはちょっとイラッとしちゃった。ごめんね」
と伝えてみましょう。
そのひと言があるかどうかで、相手との関係性はずいぶん違ってくるはずです。
意識して、気づいたあとの行動を変えていくことから、コミュニケーションは変わっていきます。
また、人はひとつのタイプの自己表現しかしないというわけではありません。
たとえば、ある50代の男性がわたしの研修を受講したときに
「家では妻が怖くて非主張的、外では攻撃的だな」
とご自身を振り返っていたことがありました。
職場でも、上司には非主張的、部下には攻撃的になるという人もいるでしょう。
このように、相手や状況次第で自己表現が変わる人も多いものです。
完璧な人間は存在しません。
いつでもどこでも誰に対してもアサーティブな人というのは、なかなかいないのではないでしょうか。
大切なのは、どういう相手や状況のときに、どのような自己表現をしているのか、自己認識できていることです。
ぜひ、ご自身のことを振り返ってみてください。
■アンガーマネジメントにもアサーティブ・コミュニケーションが必要
アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで開発された、怒りと上手に付き合うための心理トレーニングのことです。
よくアンガーマネジメントと聞くと、「怒ってはいけないもの」「怒りがなくなるもの」とい解釈されることがありますが、ここでいう「怒りと上手に付き合う」というのは、怒りがなくなることや、怒ってはいけないということではありません。
・怒る必要のあることには適切な怒り方ができる
・怒る必要のないことには怒らないで済むようになれる
ということを目指しています。
このような、適切な怒り方ができるようになるには、アサーティブコミュニケーションのスキルと考え方が必要なのです。
アメリカに本部を置くナショナルアンガーマネジメント協会で、15人しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルに、アジア人でただひとり選ばれ、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の代表理事も務めている安藤俊介さん曰く、アメリカでのアンガーマネジメントのトレーニングには、アサーティブ・コミュニケーションが含まれているとのことです。
■怒りは溜め込まず、上手に出そう
人は、怒りという感情が絡むと、本来の目的を見失い、伝えたかったことからずれてしまうことが多々あります。
次のような経験はありませんか?
・余計なことを言う、つい言いすぎてしまう
・イラッとして感情的にやり返す
・売り言葉に買い言葉のようになってしまう
・わかってほしいこと、伝えたいことがあるはずなのに論点がぶれてしまう
その結果、
「あんなことを言わなければよかった…」
と後悔し、自己嫌悪や罪悪感を抱いてしまう人も多いのです。
また、怒りを感じたことに対して、表現し慣れていなかったり、怒ることはよくないことだと思い込んでいたりする人は、イラッとしたことも、ぐっと自分のなかに抑え込んでしまう傾向があります。
「『あのとき言っておけばよかった』と後悔しているものの、いまさらどう伝えていいのかわかりません…」
「言われたこと、されたことに怒りを感じていますが、悶々と怒りを溜めてしまいがちです…」
という相談も、あとを経ちません。
逆に、自分のなかで怒りをうまく扱えるようになると、自然と健康的な人間関係を構築できるようになるでしょう。
そのためにも、アンガーマネジメントとアサーティブ・コミュニケーションの両方を、身につけることが必要になります。
怒りを扱えるようになると、ほかの感情の整理もうまくいくようになるはずです。
円滑で健康的なコミュニケーションをとれるように、感情と上手に付き合えるといいですね。