-COLUMN-

思い込みから生まれる、人とのすれ違いを防ぐには?

日付:2023年02月1日

■お互いの「思い込み」の違いをすり合わせる

「産休明けの女性に対して、どう接したらいいのか悩んでしまう」

という上司も多いと耳にします。

そのひとつとして、よかれと思ってしたことが相手を傷つけてしまったケースを、例に挙げてみましょう。

営業部の30代女性・Cさんから受けた相談です。

 

Cさんは、復帰後もともと担当していた企業のイベントについて、上司から

「出張になるから行かなくていい」

「今後も地方出張が必要になる案件は、ほかのメンバーに担当してもらうし、主担当ではなくサポートにまわってほしい」

と言われてしまいました。

復帰していままで通りに主担当として仕事をし、出張もするつもりだったCさんは、このことで仕事へのモチベーションが下がってしまったそうです。

 

わたしとの相談時には、

「わたしは戦力外だと思われているということ? ひどい!」

という上司への怒りと、産休明けの社員への対応について、組織への不満を感じているような状態でした。

でも、不満な気持ちを抱いてただ悶々としているだけでは、何も解決しません。

 

こういったときに大切なのは、「今後どうしたいか」、自分にとっての理想的な未来を考えていくことです。

そこで、本当は何を伝えたいのか、どう伝えたいのかを事前に洗い出し、上司に対して次のように伝えたのです。

 

「産休後の復帰のことで、改めてお話があります。わたしとしては、産休前と同じように仕事に取り組みたいと思っております。なぜ、このようなお話の時間をいただいたかというと、先日◯社のイベントに関しての出張はしなくてもいいとおっしゃったことで、部長はわたしに対して以前のように仕事をすることを、期待していないのではないかと思ってしまったからです」

 

すると、上司からは

「復帰したばかりだし、小さいお子さんがいて出張は負担がかかりすぎると思い、わたしなりに配慮したつもりでメンバー調整をしたんだ。言葉が足りず、勘違いをさせてしまったみたいだね」

という返答があったそうです。

 

誤解が解けて、Cさんは嬉しそうでした。

このように、伝えることで相手の真意がわかることもあります。


 

■思い込みを手放すために、まず話をしてみよう

この事例では、双方の思い込みがすれ違いの原因になっていました。

Cさんの場合は、次のような思い込みの影響を受けていたと考えられます。

 

・出張に行かなくてもいいということは、担当から外そうとしているのかも…

・わたしは必要とされていないのかもしれない

・復帰した社員への対応がひどい

 

このように、一度ネガティブなとらえ方をしてしまうと、そのほかのことまで悪く見えてしまうものです。

 

また、上司の場合は、

・子育て中の社員には、出張させないほうがいい

・なるべく仕事の負担は減らしてあげたほうがいい

・要職には就かせないほうがいい

というアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)が影響していたのでしょう。

どのような働き方をしたいのかは、一人ひとり違うものです。

自分がよかれと思ってしたことでも、知らず知らずのうちに相手を傷つけ、こじれてしまうこともあります。

 

それを避けるためにも、

「お子さんがまだ小さいから、出張はしないほうがいいかと思ったんだけれど、◯◯さん自身はどう思うかな?」

と、相手の意向を確認し、すり合わせをしておくことが大切です。

 

前回のコラムでもお伝えしたように、アンコンシャスバイアスは誰でも持っているもの。だからこそ、自分の思い込みを押しつけていないか振り返り、相手の意見を確認しながらコミュニケーションをとったほうがいいのです。

 

そのほかにも、

「女性なんだから、もうちょっと丁寧に事務仕事をしてよ」

「女性なんだから、もっと上品な振る舞いをしたら?」

「女性なんだから、言葉に気をつけたほうがいいよ」

といった発言にも「女性だから」といった、男女の役割について差別や偏見を持つ、ジェンダーバイアスが影響しています。

無意識とはいえ、このような発言で意図せず相手を傷つけ、ハラスメントになってしまうこともあるので、注意が必要です。

 

アンコンシャスバイアスには、本当にさまざまなものがあります。

「人はそれぞれ違うものだ」という意識を常に持ち、思い込みによるすれ違いを防いでいけるようにしたいですね。

 


 

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