日付:2024年02月1日
■相手の話を整理しながら、話の主旨を引き出す
人によって、あちこちに話が脱線し、何を言っているのか自分でもわからなくなってしまう場面を目にすることがあります。
こういったときには、聴き手が主導権を握り、話を整理しながら相手の話を引き出すことも大切です。
「ここまでの話はこうだよね」
「こういう理解で間違っていないかな?」
「いま、この話を知りたかったのかな?」
と言葉をかけると、相手も
「そう、そういうことです!」
と、何かしら答えてくれるでしょう。
相手の話に耳を傾けつつ、相手が一番言いたかったこと、知りたかったことの主旨を整理しながら聴く姿勢は能動的な聴き方に該当します。
これはまさに、アクティブ・リスニングにあたる力です。
■相手の表現を変換していないか
時々、相手が使った言葉を、自分の思考のフィルターを通して変えてしまう人がいます。
話し手の話を整理するときのポイントは、なるべく話し手の表現を変えないように聴くことです。
たとえば、研修にて受講者が、
「うまく怒りを表現できたら、思いを吐き出せるような気がします」
と言ったことに対して、講師が
「それで、スッキリするということですよね」
と言い換えたとします。
でも、相手は「思いを吐き出せるような気がする」と言ったのであって、「スッキリする」とは言っていません。
これは実際にあった話ですが、案の定、話し手は
「いや、そこまでではなくて……」
と反応していました。
「そこまでのことは言っていない」
「そういう意味ではない」
と相手が思った時点で、心のやりとりは成立しなくなってしまいます。
言葉の置き換えには、十分注意しましょう。
■話を真剣に聴くことで、要約力を身につける
相手の話に真剣に耳を傾け、相手が何を言わんとしているのか、本当に聴いてほしいことは何なのかを引き出しているうちに、次第に要点をつかんで、相手の真意を頭の中で組み立てられるようになります。
これは、一言一句違わず暗記することや、相手の話をそのまま繰り返すこととは違います。
その人の言わんとしていることをキーワードでつかむのは、コミュニケーションでとても有用です。
相手の言っていることをしっかり聴いているうちに、要約力が自然と身について
いきます。
ただし、相手の言ったことを正確につかむことが重要で、自分のフィルターを通して言葉を変換したり、
「つまりこういうことかな」
「ああいうことかな」
と主観を混ぜてしまうと、どんどん話がずれてしまうので気をつけましょう。
■フィードバックでは、正確な言葉やフレーズをつかむことは欠かせない
相手の話を正確に聴きとることは、フィードバックをするときにも必要です。
わたしはよく研修にて、ロールプレイング実習を実施することがあります。
ロールプレイング実習では、事例を用いて実践することで、個人の課題、発言や対応の仕方傾向を明確にすることができるので、実際の現場でも実践しやすいという声を多数いただいています。
このロールプレイング実習をさらに効果的にするには、フィードバックが適切であることが必須です。
そのフィードバックでは実習に取り組んだ人の発した言葉、セリフを正確に確認しつつ、
「◯◯さんの言った、□□というセリフは、△△と表現したほうがより相手に伝わりやすいと思いますがいかがでしょうか」
というようにアドバイスをします。
その際に、相手が口にしていない言葉、表現で返すと
「いえ、そんなことは言っていません(言葉は使っていません)」
と言われるでしょうし、相手の心にも響きません。
職場でも、誰かの発言に対して
「お客様に対しては、□□と伝えたほうがより相手に受けとめてもらいやすくなると思うよ」
「役員への報告では、□□という表現はしないほうが失礼にあたらないよ」
といったフィードバックをすることがあるならば、相手が言ったことを正確に聴き取り、すり合わせ、アドバイスできるよう正確に聴きとることも重要です。
人は誰でも「自分の話を聴いてほしい、耳を傾けてほしい、理解してほしい、共感してほしい」という要望を持っています。
まずは、相手の話を聴いているということがわかるように表現し、何が言いたいのか把握するようにしましょう。
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