日付:2022年12月10日
■「能力や立場が低いから言ってはいけない…」というのは思い込み?
さまざまな企業の人と話をしていると
「わたしなんかが意見や改善方法を提案するのは、おこがましいのではないか」
「わたしがこんなことを言うのは、失礼なのではないか」
といった発言をする人が、とても多いように感じます。
これは、男性にも女性にも言えることで、比較的、上下関係のピラミッド構造が明確な組織に属している人たちほど顕著です。
日本では、まだまだ序列がはっきりある組織も多いため、意見を言っても通らないのではないかと感じてしまうのかもしれません。
これは、まだ役職に就いていない若手の層だけでなく、中間管理職の人がトップマネジメント層に対して感じていることとしても当てはまるようです。
本来、発信していい場であっても
「相手に比べて、この技術やこのスキルがまだ足りないから…」
「自分のほうが、立場が下でキャリアが短いから…」
という事実を意識しすぎている人は、少なくありません。
「まわりの人と比べて、自分は能力が低い」
という思いを抱いているがゆえに、コミュニケーションがうまく機能していないというケースは、組織の規模を問わず多く見られます。
実際に、組織にはさまざまな人が集まってくるわけですから、能力やスキルの差、経験値の差はあるでしょう。
「立場が低い人、スキルがない人は何も意見を言ってはいけない」
という考え方は、自分が心のなかで決めつけてしまっている思い込みかもしれません。
もしそういった思いが浮かんでくるときには、
「これは自分自身の思い込みかもしれない。『言ってはいけない』というのは事実ではない。言ってみると、もしかしたら、聞いてもらえる可能性もあるのでは?」
と自身に問いかけてみてはいかかでしょうか。
■自分のよいところも不完全なところも認めよう
相手と対等なコミュニケーションをとるには、自己信頼が大切だということは、これまでのコラムでもお伝えしてきました。
「自己受容」ができてこそ、自分を信頼する力が生まれます。
自己受容とは、自分のよいところ、できていることがわかり、さらに欠点や苦手なこと、能力的にできていないことも自分自身の一部だと受け入れることができることを指します。
自分を認めることができないと、相手を真に認めることはできません。
非主張的な自己表現をしているとき、自己受容度が低いことは容易に想像できるでしょう。
でもじつは、攻撃的な自己表現をしているときも、威圧的で一見強そうに見えたとしても、自分の弱さを防御するための攻撃であることが多いのです。
自分の意見や考えに反対されたり、「それは違う」と言われたりすると、自分を認めてもらえていないような気持ちになる。
また、相手よりも劣っていることは認めたくないという気持ちから、相手の優位に立とうと攻撃的な表現をする。
自己受容できていない人にはこういった傾向があるのですが、他者にマウンティングする人も、これに当てはまります。
たとえ意見が違って相手からNOと言われても、自分自身が否定されているわけではありません。
人は、誰でも不完全なところがあります。
できないことや間違うこと、失敗もあるでしょう。
でも、だからといって人としての価値が下がるわけではないのです。
相互信頼を土台にした対等なコミュニケーションをとるためにも、自分のよいところ、できているところはもちろん、不完全さをも認める勇気が必要です。
■自分のいいところに目を向けて、自己受容を高めよう
研修で行うワークのひとつに
・自分の好きなところ
・いいところ
・できているところ
・がんばっているところ(がんばったこと)
に目を向けて書き出してもらうワークがあります。
このワークでは、じつに多くの人から
「そんなことを書いたこともない。書くことが何もない」
という声が寄せられます。
でも、普段取り組んでいない人ほど、ぜひ挑戦してみてください。
アンガーマネジメントにも「サクセスログ」という、どんな些細なことでもいいので、うまくいったと思えることを書き出すというトレーニングがあります。
この「サクセスログ」に書き出す内容は、「このくらい当たり前」と感じるようなことでもかまいません。
たとえば、次のようなことを挙げてみるのもおすすめです。
「毎朝6時に起きて、家族の食事の支度をしている」
「毎日のウォーキングが1ヵ月続いた」
「パワーポイントの資料はうまく仕上げることができる」
「仕事と並行して、資格試験の勉強をがんばった」
「きれい好きで整理整頓が得意」
3日にひとつずつくらいでも十分です。
ぜひ書き出してみてください。
■コミュニケーション能力は、練習次第で誰でも上達する
「対等な立場で伝える」という心構えを持ったあとに大切になってくるのは、「どう伝えるか」ということです。
言葉の選び方、表現の工夫といった点にも注意を向ける必要があるでしょう。
「いままでうまく伝えられたことがなかったから能力がない」
と思っている人は大勢いるのかもしれませんね。
でも、安心してください。
赤ちゃんのときから、生まれつきコミュニケーション能力が高いという人はいません。
伝え方のスキルは、練習次第で、誰でも身につけることができるものなのです。
たとえるなら車の運転技術のようなもの。
はじめはうまくいかないことがあっても、場数を踏み、コツをつかんでいくことで、かならずスキルとして身につけることができるようになるでしょう。
相手に伝わるように、伝える練習を積み重ねていきたいものですね。