-COLUMN-

コミュニケーションのズレをなくし、チームを円滑にする鍵とは?

日付:2023年05月1日

■言葉と態度が違うと相手は戸惑う

人とコミュニケーションをとるときに、自分の思いを正しく伝えるための配慮をしていますか?

 

どのような言葉で伝えるのかということも重要ですが、それをどのような態度や表情で表現するのかということも見逃せないポイントです。

とくに対面で話をするときには、「伝えている内容と選んだ言葉」と表現するときの「態度や表情」が一致していなければ、どう受けとめていいのか相手は戸惑います。

 

たとえば、

「◯◯さん、これ大丈夫? 大変じゃない?」

と聞いたときに、

「大丈夫です。大変じゃないです」

と口では言いながら、表情や態度がとても大変そうな人の場合、

「…大丈夫じゃないよね?」

「頼んではいけなかったかな」

「これ以上、任せてはいけないものかな」

と、相手に気をつかわせてしまいます。

 

言っていることと、実際に表現していることが違う人と関わる場合、まわりは本当にやりにくいものなのです。

 

また、「怒っていない」と言いながら、怒っているような態度をとる人もいます。

Aさん「怒っている?」

Bさん「怒っていないから」(不機嫌そうに答える)

Aさん「いや、怒っているよね」

 

このように、言葉では「怒っていない」と言いながら、物を乱暴に扱ったり、音を立てて置いたり、不機嫌そうにパソコンのキーボードを叩いたりする行動は、まわりを萎縮させてしまいます。

 

「すごく不機嫌そうだな…」

「やっぱり怒っているよね…」

と、かえって相手に気をつかわせる分、いつまでも「察してほしい」という態度をとり続けていると、「面倒だな…」「やりにくい」と感じて、離れていく人も多くなってしまうでしょう。

 

■「嫌われたくない」という思いは、言葉と表情を乖離させる

人に注意したり、頼まれたことを断るときなどに、笑顔のまま伝えようとする人は、意外と多いものです。

アサーティブ・コミュニケーションの研修でも

「言いにくいことを笑顔で表現した経験がある人はいますか?」

と聞くと、20人中5〜6人は手を挙げます。

つまり、自覚があって笑顔で断り、叱り、怒ったりしている人は多いということです。

 

自覚がある方々に対して、「なぜ笑顔になるのでしょうか?」と尋ねたところ、

「相手のお願い事を断るとき、笑顔で伝えたほうが、悪く思われずに感じよく伝わる気がして…」

「注意したり、叱ったりするとき、相手にとっても耳の痛いことなので、少しでも柔らかく伝えられるといいかな、と思って…」

というような回答が返ってくることが多々ありました。

相手に悪く思われたくない、その場の雰囲気を悪くしたくない、という気持ちが笑顔で伝えるということに起因しているケースが多いようです。

 

■笑顔でいれば丸くおさまるというのは思い込み

「笑顔でいれば、相手にとって耳の痛いこと、好ましくない内容であっても、場の雰囲気が悪くならない」

これは、本当にそう言えるでしょうか?

冷静に考えてみると、笑顔でなかったら嫌われる、感じが悪く伝わるということはないとわかるはずです。

 

むしろ、真剣な表情で、

「これは改善してほしい」

「これはやめてほしい」

「申し訳ありません、これは致しかねます」

と言ったほうが、相手に真剣さや真意が伝わる可能性は高いでしょう。

 

気づいていないだけで、じつは笑顔で言うことによるデメリットもあるのです。

たとえば、注意したことが

「たいしたことではない」

と軽く思われて、一向に改善されない。

断ったはずなのに、

「本当は引き受けられる余裕はあるのでは?」

と思われ、さらにゴリ押しされてしまった…という事例もあります。

 

このように、言いにくいことも笑顔で伝えれば丸くおさまる、いい印象になる、というのは思い込みです。

むしろ、相手から見ると

「本心がどこにあるのかわからない。とってもやりにくい…」

と思わせてしまっている可能性もあるのだと知っておきましょう。

 

■言葉と行動の一致は、コミュニケーションを円滑にする鍵になる

拙著『コミュニケーション大百科』(かんき出版)でも紹介していますが、不一致の行動を起こしている人は、意外と多いものなのです。

 

無理なお願いを引き受けるときに、

・少し怒ったように「大丈夫です」と言う人

・困った表情をしながら、「いや、大丈夫です!」と言う人

このような態度をとると、本当に頼んでいいのだろうかと、かえって相手を戸惑わせ、気をつかわせてしまうことにつながります。

 

アサーティブ・コミュニケーションでは、自分に正直に、いまどのように感じているのか、どんな思いで伝えているのかを、言葉と態度で表現するよう推奨しています。

これが、コミュニケーションのズレを解消し、チームを円滑にしていく鍵となるのです。

 

まずは自分の言葉、表情、態度に不一致がないか見直してみませんか?

自分が思っていること、本当に伝えたいことと、相手から見た言動が一致していくことで、お互いにコミュニケーションがラクになっていくでしょう。

 

*アサーティブ・コミュニケーション(日本経済新聞出版)好評発売中!*