日付:2023年12月1日
■相手の話に関心を持って聴いてみる
会話をしているなかで、こちらがまったく興味のない話を、相手が一生懸命に話してくることはありませんか?
相手にとって大切な話であるなら、よりよい関係性を築くために興味を持って聴いたほうがいいでしょう。
実際に、自分には興味がないと思っていた話でも、聴いているうちに興味深く感じられることもあるものです。
以前、ある女性との会食で、ゴリラの話が話題にあがりました。
最初は興味がなかったのですが、「おとうさんゴリラが熱心に育児に関わっている」というくだりから、ゴリラと人間の育児の違いに話が発展し、しばらく盛り上がった結果、つい、ゴリラの生態について自分でも調べてしまいました。
最初は興味のない話でも、先入観を持たずに聴いてみることで、新しい視点や発見がある場合も多いのです。
■傾聴することで会話は弾む
会話をするときに、「共通の話題を探さなければ」と感じてしまうことはありませんか?
でも、かならずしも共通の話題がなければいけないわけではありません。
何か共通する話やテーマがなかったとしても、先ほどのゴリラの話題のように、相手が話したことに対して興味を持って聴くことで、会話が盛り上がることがあります。
「それはどうなんですか?」
「それってどういうことですか?」
と聴き続けていくと、相手は気持ちよく話ができるものです。
好奇心を持って、知らないことを聴いていくスタンスで会話をすると、自然と話が弾みます。
そうしているうちに、共通の話題を探そうとしていたことも、忘れているのではないでしょうか。
■話し手の伝えたいことを受け取ろう
アンガーマネジメントをテーマにした研修にて、ある受講者からこんな質問を受けました。
「じつは、以前もアンガーマネジメントをテーマにした研修を受けたことがあります。そのときの講師に、『相手が感情的な怒りをぶつけてきたら、どう対処すればいいのでしょうか?』と質問をしたところ、『アンガーマネジメントは、自分の感情をマネジメントすることなので、相手の怒りはどうすることもできません』とだけピシャリと言われてしまったのですが……、やはりその回答なのでしょうか」
そこでわたしは、次のように尋ねました。
「〇〇さんが本当に聴きたかった回答ではなさそうですね。『どう対処したらいいのか』と悩ましく思っているのですね。相手が怒りをぶつけてきたときに、どう感じるのか、どうしたいのか。思ったことをお話しいただけませんか?」
すると、このような気持ちを伝えてくださいました。
「相手が感情的に怒りをぶつけてきたときに、どうしていいかわからない自分がいて、そういう相手に何もできない、何もしてあげられない自分がとても情けないのです。力になれない無念さや虚しさを感じてしまうのです」
このように、相手の話を聴いた瞬間に、「あ、これはよくある質問だ」「またこの手の話だ」と思って、相手の質問の意図も聴かずに回答してしまうことはないでしょうか。
先入観を持たずに相手の言葉を聴くことも、注意していきたいポイントです。
■話を聴くときには、先入観がないか意識する
「感情的な怒りをぶつけられたときにどう対処すればいいですか?」
と質問してきた方に、
「そのように感じてのご質問だったのですね。相手の感情は相手のものですし、相手の怒りに対してどうにかしてあげたいと思ってもできないこともありますものね。
アンガーマネジメントでお伝えできることは、まず相手の感情に振り回されないこと、相手の感情に共感することだととらえていくのはどうですか?」
と提案したところ、心が軽くなってスッキリしたと言っていました。
人は、過去に聴いたことのある話をされると、「ああ、またこれね」と早く解決方法を教えてあげたくなってしまうものです。
ところが、先ほどの例のように、似ているようで、じつは自分がいままで経験してきた相談事とは違う話題だという可能性も大いにあるのです。
先入観を持たずに、相手の話をしっかり引き出しながら聴くようにすると、こうしたズレはどんどんなくなっていきます。
わたし自身も、取材を受ける際に「またこの質問か」と思ってしまうことがあります。
そんなとき、「こういう話を知りたいのだろう」と決めつけないようにすることは、注意していることのひとつです。
同じような話を耳にしたときに、勝手に「これはこうだ」「あれはこうだ」と決めつけ
ず、先入観を持っていないか気をつけましょう。
相手の話の真意は、最後まで聴いてみなければわからないものです。
相手の話に耳を傾けて、心の奥深くにある真意を引き出し、よりよい関係を築いていけるといいですね。
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